4年前の悪夢は繰り返さない。11月2日開幕の国際大会「プレミア12」に出場する侍ジャパンが27日、宮崎から2次合宿地の沖縄・那覇へ到着。日本シリーズを戦っていたソフトバンクと巨人の代表メンバーも合流し、いよいよ臨戦態勢に入った。稲葉篤紀監督(47)は前回大会準決勝で韓国代表に世紀の大逆転負けを喫した苦い経験を踏まえ、あの手この手でチーム全体の手綱を締めている。

 指揮官の表情には気合が満ちあふれていた。那覇入り後、本大会前の最終調整とカナダ代表との強化試合2連戦(31日、11月1日・那覇)について「チームプレーもしっかりやっていきたい。2試合しかないので、その中で試してみたいという思いはある。選手の状態も見ながら5日間しっかりやっていきたい」。

 宮崎合宿を充実した内容で終え、この那覇からは日本シリーズ参戦メンバーも加わり、全選手が揃う形となった。

「非常にいい打線が組めるので、どう機能していくか。つながっていくかというところはしっかり考えてやっていこうと思っている」

 28日スタートの2次合宿は大会初戦(11月5日・ベネズエラ戦)まで残り10日を切ったこともあって、ほぼ本番モード。そうした中、指揮官がチーム内で徹底化を図ろうとしているのが“4年前の悪夢”の払拭だ。

 2015年の「第1回プレミア12」。東京ドームで行われた準決勝・韓国戦で9回まで3―0とリードしながら継投策に失敗し、リリーフ陣が大炎上。1イニング4失点で勝利目前の試合をひっくり返され、3位に終わった。

 当時チームを率いていた小久保裕紀前監督が、世間から猛烈な批判を浴びた苦い過去は、今も侍ジャパン関係者の脳裏に“黒歴史”としてこびりついている。

 稲葉監督はこの小久保ジャパンで打撃コーチを務めており、だからこそ4年前を経験していない若侍たちに「国際試合の怖さ」を軽視させないようにするため、メンバー編成の面でも思慮を巡らせていたという。

 4年前の韓国戦でスタメン出場した秋山(西武)、坂本勇(巨人)、山田哲(ヤクルト)、松田宣(ソフトバンク)を今大会でも選出したのは、当時の苦い経験を若侍たちに伝える狙いがある。

「今回のチームは主将を置かない方針だが、秋山は監督からまとめ役に任命されている。あの悪夢を経験していることも無論、彼が選ばれた大きな理由と聞いている」(侍ジャパン関係者)

 それだけではない。前回大会の韓国戦では“魔の9回”にベンチワークのお粗末ぶりを露呈。ベンチとブルペンの伝達係をNPB関係者が務める一幕もあった。しかし、今回の稲葉ジャパンでは監督以下、金子ヘッドコーチ兼打撃コーチ、そして建山投手コーチらの元日本ハムOBでがっちりと固められており、チーム内からも「首脳陣間の関係も円滑で、指揮系統が混乱するようなことはまずないだろう」。

 稲葉ジャパンにとって今度の「プレミア12」は国際大会初陣となる。開催国として東京五輪出場権は得ているとはいえ、4年前のようなぶざまな負けは許されない。