侍ジャパンが空前のラグビー旋風に大困惑している。来月2日に開幕する国際大会「プレミア12」へ向け、稲葉篤紀監督(47)率いる日本代表は22日、宮崎で合宿をスタートさせた。好天に恵まれ、地元ファンやメディアも大勢駆け付けてにぎわったが、激しい取材合戦を巡っては“旬なワード”に侍戦士がピリつく場面も…。日本列島を興奮させたブームの余波は球界にも及んでいる。

 侍ジャパンの合宿初日はサインの確認と連係プレーを中心に、野手は全員バント練習をこなすなど国際大会を念頭に置いたメニューが組まれた。稲葉監督はリーダー格と期待する秋山(西武)とじっくり話し込むなど、率先してコミュニケーションを図り、選手同士も明るい表情で会話を交わす姿が多く見られた。

「まずはプレミア12で世界一を取る」と意気込む指揮官も、初日の動きには満足顔。「しっかりと自分で動いてやってきてくれた。いい雰囲気でやれたと思います」とうなずきながら振り返った。

 間もなく開幕するプレミア12の初優勝はもちろん、侍ジャパンの大目標は東京五輪の金メダル。だからこそ“あの話題”には敏感になる。「僕らは勝って当たり前。ベスト8で拍手をもらえる立場じゃないんです」。テレビ各局に囲まれたある侍戦士は取材後、思わず顔をしかめた。

 日本は今や、空前のラグビーブームに沸いている。“ONE TEAM”をスローガンにW杯初のベスト8進出を果たしたラグビー日本代表はお茶の間の人気者だ。準々決勝で南アフリカに敗れて戦いは終わりを迎えたが、まだ熱気は冷めやらない。

 合宿地の宮崎でも初日からラグビーに関連した質問やトレンドワードが乱れ飛んだ。稲葉監督は「競技は違えど日の丸を付けて戦うというのは刺激を受けたし、野球は野球でみんなで切磋琢磨しながらやっていく」と受け答えたが、ある選手への取材では「まだ初日ですが“ワンチーム”というところでどうでしょう?」という露骨な問いかけも…。こうした空気に一部の選手たちは困惑を隠せないでいる。

「ラグビーも歴史あるスポーツだし、今回の偉業にはもちろん刺激は受けています。ただ野球は野球で積み上げてきたものがある。ラグビー、バレーと国際大会で日本の活躍が続いているので『次は…』と期待されるのは分かりますが、具体的なワードでひとくくりにされてしまうのはちょっと…」(侍ジャパンメンバー)

 とはいえ、そんな流れに理解を示す声も。侍関係者は「日本全体がこうもラグビーで盛り上がっているんですから、多少は流れに乗らないといけないのかな、と。向こうの終わりとこっちのスタートも重なりましたしね。数日すれば野球にフォーカスした流れになるのでは、と見ています」と静観の構えだ。

 日の丸の重みも、ワンチームで戦う重要性も、侍戦士たちは重々承知。稲葉監督も「みんなが一つになって、というのを大事にしていきたい」と桜の戦士に続く快進撃を誓っている。