野球の神様に愛された男が、金字塔を打ち立てた。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(29)が21日、日本ハム戦(札幌ドーム)で史上70度目(65人目)のサイクル安打を達成した。第1打席に先制の4号ソロで号砲を鳴らすと中前打、二塁打、中前打、三塁打の順で決めた。偉業達成に「奇跡なので怖い」と身震いした柳田。人生訓である「野球の神様に愛される生き方」が、偉業達成を後押しした。

 柳田がパ・リーグでは11年ぶり32人目、球団では4人目となるサイクル安打を達成した。まずは初回二死から、難しい内角へのカットボールを強振し、右中間席へ先制弾を放った。4回先頭で中前打、5回はあと数十センチで本塁打という中堅フェンス直撃の適時二塁打を放つと、6回は中前へ適時打。偉業達成を期待して周囲がざわつく中、8回の第5打席で右中間を真っ二つに破る適時三塁打を放って完成させた。

 三塁打を振り返って「抜けた瞬間、おっ!と思って一生懸命走りました」と笑わせると「打撃の調子は良くないんです。でも、こういうこともあるんだなと思った。手応え? 全くつかんだものはありません!」と謙虚な姿勢で喜んだ。

 野球の神様がまた一つごほうびをくれた。2015年のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)達成後、周囲は「40―40(40本塁打、40盗塁)」とともにサイクル安打達成を期待した。そんな声に柳田はこう答えた。

「サイクル安打は無理でしょう。あれはめちゃくちゃ難しいっす。技術どうこうっていうより『運』だと思うんで。日ごろの行いが出るんですよ。だから僕はできませんよ。野球の神様に認められた人にしかできない。サイクル安打もそういうもん」

 例えば、二塁打、三塁打が狙える当たりでも、様々なシチュエーションで自分の前で走者が詰まったら先の塁へは進めない。チームスポーツゆえの難しさもあるだろう。「日ごろの行い」という言葉に、柳田の人生訓が詰まっている。

 野球の神様に愛されるために、初心を忘れず生きてきた。口ぐせは「ヘタクソ」。ヘタクソだから練習する。常に遠征先のホテルにもバットを持ち帰り、打撃の真髄をつかむために素振りを繰り返している。「神様がたま~に見ててくれるように、練習するだけです。(人と同じレベルで)普通に練習しとったら(神様は)気づかんですからね」。野球に敬意を表して、謙虚な姿勢で取り組んできたことが、本人の言うところの「運」を引き寄せたに違いない。

 この日は昨季、11試合で打率4割5分2厘、4本塁打、14打点と大暴れした札幌ドームで、自身2度目の5安打をマークして4打点の猛ハッスル。「今日は今日。明日は明日なんで、また明日頑張ります!」と慢心はない。初心を忘れず、これからも己の野球道を突き進むつもりだ。