投手、内野手、外野手と三刀流をこなす大阪桐蔭・根尾昂(3年)に、プロの注目が高まっている。これまで各球団のスカウトたちは先入観を持たず追い続けてきたが、今秋ドラフト会議での指名を控え、投手か野手かの「適性」を見定めつつある。第90回選抜高校野球大会に集結したプロスカウトが語る根尾の「将来像」とは――。

 投手・根尾は最速148キロの速球を武器に昨秋公式戦で19イニング33奪三振、防御率0・47と抜群の成績を残した。今大会も3回戦の明秀日立(茨城)戦で11三振を奪って1失点完投。「練習の割合は遊撃手と打者の方が多い。投手は1割から2割くらい」(根尾)という中で、潜在能力の高さを証明した。

 野手としては高校生離れしたスイングで、強打者が居並ぶ大阪桐蔭で1年から4番を経験。新チームでは、強肩を生かした守備範囲の広い遊撃手として急成長を遂げている。中学2年まで両立していたスキー競技では全国優勝、世界大会にも出場した。スキーで培った強靱な足腰と体幹の強さを生かし、守備では球際の強さも光る。

 投手としても野手としても非凡な才能を持ち合わせているゆえに、気になるのはその「適性」。大谷翔平(エンゼルス)のように「二刀流」の素質があるのか、専念するなら投手か、それとも野手か、プロスカウトの本音を聞いた。

 パ・リーグの球団スカウトは「ウチは野手として見ている。投げている姿は、昨夏にチラッと見たくらい。確かに投手としてもいいものを持っているが、もう少し角度が欲しい。投手としては上背が足りない」との理由から野手一本で評価しているという。

 別のパ球団スカウトは「投手でも短いイニングなら十分通用する。素材は間違いなくいいし、この世代ではトップクラス」。

 ただ「抜群の打撃センスがあるので、それを生かすことになるでしょう」との観点から野手として注目している。その他、多くの球団が同様に「野手・根尾」の可能性を見いだしている。

 どの球団も野手として評価する最大の理由は「万能性」だ。セ・リーグ球団のスカウトは「内野も外野も守れるのが大きい。将来的な理想は遊撃で主力を張ることだが、その時々のチーム編成に応じて外野にコンバートできる。そういう汎用性があって、センターラインを守れる強肩強打の選手は魅力的」と語る。

 日本ハム・山田正雄スカウト顧問は「タイプとしては、ソフトバンクの今宮に似ている。今宮も高校時代は投手で150キロを超える球を投げていた。60本以上の本塁打を打って強肩強打の遊撃手だった。その今宮と比較しても、根尾の方が打撃の完成度は高い。将来的には所属チームだけでなく、日本代表の正遊撃手を担える逸材」と話す。

 オリックス・谷口悦司スカウトは「タイプ的には松井稼頭央(西武)選手。肩があって足があって長打も打てて率も残せる。理想としてはそういう選手」と指摘した。

 他にも、かつて高校時代のイチロー(マリナーズ)を担当したセ球団のベテランスカウトからは「素材としては『イチローをしのぐ逸材』と言っても過言ではない」という声まで。無限の可能性を秘めた17歳は、間違いなく今秋ドラフトの目玉だ。