後藤芳光球団社長兼オーナー代行が語るソフトバンク「世界一」への哲学

2018年03月29日 16時30分

工藤監督(後列中央)が率いて4年目。V10へ向けて、まずは日本一連覇を狙う

 いよいよ2018年のプロ野球が30日に開幕する。今季も日本一に一番近いチームと言えそうなのがソフトバンクだ。ここ4年間で3度の日本一に輝き、今や名実ともに球界の新盟主の座に上り詰めようとしているが、目標に掲げているV10に向けたビジョンはいかに。フロントトップの後藤芳光球団社長兼オーナー代行(55)に、補強と育成の方針、12球団で1位を走る総年俸への考え方、そして昨季まで在籍した松坂のことなど“王者の考え”を聞いた。

 ――これまで日本一のオフにも目玉の補強があったが今季はなかった

 後藤社長:今の戦力が他球団と比べても、質、量ともにトップだと思っている。今年に関しては我々の選手と比較した上で、補強すべき人材がいたかというと残念ながらいなかった。外国人選手に関しては、おそらくいるのでしょうが、外国人枠がある。(最終的にFA権を行使せず米球界へポスティング移籍した)西武の牧田選手には関心もあったけどね。メジャーに行くという思いがあったので仕方がない。

 ――FA補強は4年間行っていない

 後藤社長:一昨年でいえば岸君(西武から楽天へFA移籍)は、いい投手で興味はありますよ。でも、彼は地元への回帰が明確でしたからね。それは大事なことで、我々も九州の選手という視点で見る部分もある。まあ、またFA市場はにぎやかになるんじゃないですか。個別でのコメントはしませんが、これからの3年間、FA市場は魅力的なものになるのではないでしょうか。

 ――V10には補強と育成の両立が重要

 後藤社長:常に補強と育成は両輪です。育成についても、うちはドラフトから明確にやってきていますからね。素材として素晴らしい選手が着々と成長してきている。

 ――12球団トップの年俸面について。年俸バランスを崩しているとの声もあるが

 後藤社長:年俸が高ければ優勝できるかというと、野球はそうではない。それならヤンキースとドジャースが毎年優勝しないといけなくなる。チームにはそれぞれ個性があっていいし、その個性を認め合うリーグがファンから支持されるリーグだとも思います。僕らの信じるやり方は、頑張っている選手に対して、マーケットプライス(市場価格)を提供すべき。それだけなんですよ。

 ――市場において正当な金額を提示する

 後藤社長:今年FAの選手がいたとして、他球団が5億円で獲りにいくとしましょう。そのときに「頑張って育ててあげたのだから、うちに残ってよ。3億しか出せないけど」。これは選手に失礼な話だと思います。選手も個人事業主なのだから、能力に応じた報酬が支払われないといけない。僕はほかのチームの選手の評価が抑え込まれていると思うんです。うちの年俸が日本で一番高いのは事実ですが、メジャー30球団でいったら一番下の球団より下になる。これも現実です。親会社が何のために球団を持っているか。我々は日本で最強で、かつ世界一を目指すチームとして、ソフトバンクホークスから発生するブランディングをグループとして球団を保有する理由にしている。それに対しては惜しまない。経済効果一つとっても、優勝した場合は福岡県の経済に年間で900億円くらいの波及効果があると言われている。年俸60億、70億が決して高いコストではないと思います。

 ――ポスティング制度を認めていないのも同様の考えになる

 後藤社長:冷たくとらえられると困るが、義理や人情で早くメジャーに行かせてやりたいという選手がいて、じゃあ頑張ってこいというのはビジネスではない。人によってはお金がもらえるというが、僕らはお金なんていらないから。むしろ、いい選手にはたくさん払ってあげたいわけですから。そしてFAのタイミングが来た時には、我々が必要な選手に対しては正々堂々と、ほかから欲しいというオファーのプライスに対してぶつかって、いい評価をしたい。ルールの中で我々のチームにいて頑張ってほしいと思っています。

 ――いよいよ開幕だが中日に移籍した松坂が話題。古巣・ソフトバンクとしては複雑な思いがあるのではとの声もある

 後藤社長:僕らは彼と3年間一緒に過ごしたわけで、特別な思い入れのある選手です。ホークスで飯を食った選手がほかのチームで活躍してくれるのはうれしいことでもあるのです。僕らは彼をどうするかということについて深く議論しました。彼にオファーを出したこともご存じだと思う。ただ、支配下で彼を留め置くには、若い選手を1人犠牲にしないといけないと考えたときに、僕らが判断した時点ではリハビリが必要だった。日本一のリハビリ設備を存分に使って回復してもらって、その時は迷いなく支配下に戻り活躍してくれればと思っていた。ただ、ここは彼の思うところがあった。それはしょうがないことだと思う。

 ――応援していく

 後藤社長:僕も地元が神奈川で、横浜高のときから応援していた立場ですからね。一ファンとして頑張ってほしい。多くのファンの前で投げる姿を見せてほしいですね。

 ――今年は球団創設80周年の節目の年

 後藤社長:80周年に関してはチームのファンの人たちに対する感謝だと思っています。今年は感謝の思いをいろんなイベントの形に表していきますから。お客さんに少しでも喜んでもらえたらと思いますね。いい年にしたいと思います。

☆ごとう・よしみつ 1963年2月15日生まれ。一橋大卒。87年に安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。2000年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)入社。ソフトバンクグループの成長と拡大を財務統括として支える。現在はソフトバンク専務、球団社長兼オーナー代行を兼務する。