人気野球漫画「グラゼニ」に登場している本紙・セキネ記者が「元グラゼニ女子」で「ミス東スポ2017」の日里麻美とともに“野球人”を取材する月イチ企画も今回が最終回。最後を飾るのは広島時代は名バイプレーヤーとして知られ現在はクリケットに転身、先頃、日本代表に初選出されたことでも注目を集めている木村昇吾さん(37)。広島時代の秘話を語るとともに、松坂世代の一人としての思いを激白する。

 セキネ:いよいよプロ野球が開幕。リーグ連覇している広島を各チームが追う展開となりそうですが、古巣の戦いぶりをどう見ますか?

 木村:ケガ人なども多少出ているようですが、普通にやれば、今年も勝つと思いますよ。2016、17年と連覇しましたが、本当は僕が最後にいた年(15年)も優勝すると思ったんですよ。それぐらい力をつけていた。和というか、個の力が揃い始めたところに、エースのマエケン(前田健太投手=ドジャース)が抜けて、みんなで“やらなあかん”というところがプラスされたんだろうなと思っています。

 日里:エース離脱の危機感から力が結集されたんですね。

 木村:小窪とか赤松だったり、いろいろな選手に後で聞くと、16年はキャンプ時から「お前、何やってんねん!」みたいな形で互いに叱咤激励しながらやっていたらしいんです。だからキャンプから「これ、いける!」と。負ける気がしなかったと言ってましたね。

 セキネ:その優勝の前年(15年)オフに木村さんはFA宣言しました。決断に至った理由は?

 木村:当時の自分はどこでもこなせるバイプレーヤーということでいわば、ジョーカーですよね。どんなカードとしても切れる、でも裏を返せば、切れるからこそ、最後まで(ベンチに)取っておかざるを得ない状態にまでなっていた。つまり、出ようと出まいと評価が変わらないんですよ。安定しちゃったところが悩みでした。

 セキネ:モチベーションの維持の問題?

 木村:あくまでレギュラーでやりたかったのにそうなるとこの位置に満足しているというか…。「何してんの、自分?」となってしまったんですよ。これは環境を変えなあかんとなって。

 日里:ただ獲得に名乗りを上げる球団はなく、最後は西武にテスト入団でした。

 木村:ネットでは「セルフ戦力外」とか「身の程知らず」とか書かれましたね(笑い)。経緯はいろいろあったんですが、西武さんが手を挙げてくれて、ありがたかったです。

 セキネ:今年は中日に入団した松坂選手を筆頭に、村田選手(ルートインBCリーグ・栃木)など、再び“松坂世代”の生き方に注目が集まっています。
 木村 僕は松坂世代といっても本当に端くれなんで応援なんておこがましいんですが、(松坂)大輔にしろ、(村田)修一にしろ、いい方向に向かっていってほしいと思っています。みんな必死に頑張っていますしね。でもその死に物狂いにやっている中で、勝ち負けがついて淘汰されていくという世界ですから。ただ現役時代はドラフト1位、大嫌いでした。

 日里:そうなんですか!?

 木村:ドラ1の彼らを倒して名を上げたいとは常に考えていましたね。バッターボックスも一緒、投げているボールの大きさが変わるわけではない。でもベンチで見ていると「何でそんなことができるんだろう」とすごい距離がある。輝いているスターはやはり違うんですよ。結局はそういった彼らに負けたくないという気持ちがあったから、プロ野球の世界でも頑張れたという面はありました。

 日里:最後に現在、取り組んでいるクリケットについても聞かせてください。ある意味安定していたプロ野球の世界と違い、一からの挑戦ということでぶっちゃけお金の心配は? というか、生活できないんじゃないんですか?

 セキネ:まったくあんたは最後の最後まで、質問が直球すぎるわよ(怒り)。

 木村:まあまあ、お金の問題に関しては言いだしたらキリがないですからね。クリケットのトッププレーヤーの中には成功したらインド、豪州、英国などのリーグを転戦し、30億円稼ぐ選手もいます。長年野球を続けてきて、次に同じだけの情熱を注げるスポーツに出会えたことを今は幸せに感じています。応援、よろしくお願いします!

【グラゼニとは】講談社「週刊モーニング」で連載中の、中継ぎ左腕・凡田夏之介を主人公とした異色の野球漫画。球界では有名な「グラウンドには銭が落ちている」の言葉を体現すべく、がむしゃらに道を突き進んでいく凡田の姿とともに「カネ」を巡る野球界の赤裸々な裏事情も描かれ、人気を博す。原作・森高夕次、漫画・アダチケイジ。「グラゼニ」全17巻と「グラゼニ~東京ドーム編~」14巻までのシリーズ累計で300万部を突破。4月から「BSスカパー!」でアニメが放送開始。

☆プロフィル=きむら・しょうご 1980年4月16日生まれ。大阪府出身。尽誠学園高、愛知学院大を経て、2002年ドラフト11巡目で横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)に入団。08年に広島へ移籍後は内外野を守れる貴重なバイプレーヤーとして存在感を発揮した。16年から西武に所属し、昨年10月に戦力外通告。日本の元プロ野球選手が初めてクリケットに挑戦(本紙既報)することでも注目を集めている。