【大下剛史・キャンプ点検=巨人】昨季の巨人は優勝した広島から16・5ゲーム差の4位に終わった。そう簡単に縮まる差ではないが、由伸監督は巻き返しへの一手として、二塁に2016年のドラフト1位、吉川尚輝内野手(23)を定着させようとしている。

 今も昔も強いチームには鉄壁の二遊間コンビがいた。V9時代の巨人なら土井―黒江、西武黄金期には辻―石毛、ちょっと前の中日だったら荒木―井端。しかし、昨年の巨人は二塁手を固定できなかった。開幕を中井で迎え、5月半ばから吉川尚、辻、脇谷、山本、クルーズと試行錯誤。7月半ば以降は攻撃優先で守備範囲の狭いマギーを据えたが、失礼ながら話にならなかった。

 まだまだ吉川尚には未知数なところもある。ただ、巨人の再建には安定した二遊間コンビの構築が不可欠だ。1年目の昨季はコンディション不良から春季キャンプを三軍で迎えるなど精彩を欠いたが、もともと身体能力は高い。現役時代に名手で知られた井端内野守備走塁コーチが今キャンプで徹底指導していたことからも期待の高さがうかがえる。

 しかし、この吉川尚を一人前の二塁手として育て上げられるかどうかは今年で12年目、12月に30歳となる坂本勇にかかっていると言っていい。今年の自主トレに吉川尚を誘ったのも、その自覚があったからだろう。

 主将になって今季で4年目。すでに坂本勇は「僕が責任を持って吉川を育てます」ぐらいのことを言ってもいい立場だし、場合によっては首脳陣に「もう少し辛抱して使ってください」と訴えたっていい。

 昨年の坂本勇はマギーとのコンビで守備の負担が増え、夏場以降に打率が下がった。吉川尚を育てることには個人的なメリットもある。選手寿命だって伸びるだろう。坂本勇は円熟期を迎える。名実ともにチームの顔となる上でも、いい機会だ。