昨季限りでソフトバンクを退団した松坂大輔投手(37)が23日、ナゴヤ球場の屋内練習場で中日の入団テストを受け合格した。完全非公開で行われたテストで松坂は直球、カーブ、スライダー、チェンジアップなどキャッチボール12球、立ち投げで22球を投じ合格が言い渡された。背番号は「20」と「99」が提示されたが「99」を選択。年俸は1500万円(推定)。「平成の怪物」が新たなステージで完全復活に挑む。

 中日・森繁和監督(63)をはじめ、首脳陣が見つめるナゴヤ球場の屋内練習場のブルペン。マウンドの松坂は直球だけでなくカーブ、スライダー、チェンジアップなどキャッチボールも含め34球を投じると「もう十分」とばかりに森監督はテストを終了させた。

 もちろん結果は「サクラサク」。指揮官は「この時期にブルペンに入って変化球も投げた。このままずっと見たい。キャンプに連れていく予定です」と話した。

 もっとも松坂は「合格とは、はっきり言われていないんですよね」と苦笑い。ただ「着替えてしっかり会見をやってこい。この後のスケジュールを決めてこい」と声をかけられた。口下手な指揮官の事実上の合格通知だった。「まずは第一段階というか。一つホッとしています」。甲子園を沸かせたころと変わらない大輔スマイルを見せた。

 2014年にソフトバンクと3年12億円(推定)の大型契約を結び、日本球界復帰。しかし、右肩の故障でほぼ投げることができず、昨季限りで選手契約を打ち切られた。

「もう限界」「そんな状態でいつまでやるつもりなんだ」。様々な雑音が本人の耳に入ったが「周りにどう見られようが、何を言われようが、自分でまだやり切った、悔いのない野球人生だったとは思えない。そう思えるようになるまでは自分を信じて進んでいきたい」と現役にこだわった。

 ソフトバンクファンの声も現役を続ける原動力だ。「ホークスではずっとほぼリハビリ。それでも球場でファンの方に声をかけられ『絶対に復帰したい』と思っていた。ホークスではかなわず、場所も変わりましたけど、ホークスファンへの思いは変わらない。その人たちのためにも一軍のマウンドでしっかり投げて恩返しをしたい」と言葉に力を込めた。

 入団先が決まらない間にソフトバンク・和田、阪神・藤川ら“松坂世代”の同級生から「待ってる」「信じてる」と声をかけられた。その言葉に勇気をもらった。「同じ(一軍の)グラウンドに立って言葉を交わしたい」は新たな目標となっている。

 入団した中日には不思議なつながりも感じた。「個人的に竜が好きだったので。グラブに刺しゅうするぐらいだったので。縁があるのかなと勝手に思っている」とはにかんだ。

 背番号は99。空き番となっている中日のエースナンバー20も提示されたが、99を選択した。「個人的には若い番号のほうがいいと思って、20番というのも頭にありましたけど、今の僕が着けるべきではないと思いました。ドラゴンズの中でふさわしいピッチャーが出てくるべきだと思った。99はベタなところで言うと、足したら(今までの背番号の)18になる。99という数字にも何か意味があるんじゃないかと思った」という。

「首脳陣が使ってみようと思えるまで状態を持っていかないとと思ってますし、自分ではそれができる自信はあります。開幕ローテ? 目標を持ってやりたいです」と力強く語った松坂。その目が見据える未来は復帰ではなくその先だ。