憔悴の糸井に野球人生の危機

2013年01月29日 11時03分

 大型トレードで23日に日本ハムからオリックスへの移籍が発表された糸井嘉男外野手(31)のモチベーション低下が懸念されている。トレード発表前日まで千葉・鎌ケ谷の二軍施設でキャンプに向けて自主トレに励んでいた本人にとっては予測すらしていなかった結末。近い関係者は、憔悴しきった糸井のWBCを含めた今後を不安視しながら「周囲の人間に振り回されて野球人生を棒に振らないか心配」とも警鐘を鳴らした。

 

 電撃トレード発表から2日たった25日、千葉県・鎌ケ谷の日本ハム二軍施設で球団フロント、栗山監督を含めた首脳陣らが集まり、スタッフ会議が行われた。終了後の会見で指揮官は「嘉男の名前を出すのはこれが最後だと思う。大きなトレードがあってそれをどう生かしていくのか…」。

 

 一方、その裏では渦中の糸井が人知れず会議の行われていた勇翔寮を訪れていた。中にいた関係者と顔を合わせることなく荷物整理を行うと裏口から脱出。報道陣を避け、関係者の運転する車の後部座席に身を沈めながら逃げるように古巣を後にした。この隠密行動こそが今回のトレードのショックの大きさを物語っていた。

 

 糸井に近い関係者は「本人は憔悴しきっています。報道に出ているようなメジャー移籍も早い段階であきらめていましたし、投手で獲ってくれた自分を野手として育ててくれた球団に恩義も感じていた。ことの重大さを今になって実感していて、とても新天地で『やってやろう』という感じではない」。

 

 話を総合すると、どうやら糸井自身は今季終了後のメジャー移籍を望んでおらず、チームで唯一越年していた契約交渉を早く合意させてキャンプに集中したかったものの、その着地点が想定外の「トレード」だったという。なぜこんな事態になってしまったのか?

 

「一番の原因は契約交渉を途中から代理人任せにしてしまったこと。ある程度の連係や報告はしていたんでしょうが、すべての内情が本人に報告されていたようではない」(前出関係者)

 

 2度目の交渉から糸井の代理人交渉を任された吉田朋弁護士は“途中参戦”で結果を残さなければいけない難しい役回り。にもかかわらず交渉手法は強気で球団からより好条件を引き出そうと、糸井本人の意思を超えた無謀な要求が突きつけられていたという。到底のめない条件を球団に突っぱねられた揚げ句のトレードだったようだ。

 

 しかし交渉の中で出された要求が糸井の本意ではなかったとしても、契約上は代理人を選び交渉に当たらせたのは糸井自身の意思であることから言い訳はきかない。

 

 そして、その吉田弁護士の背後で戦略をさずけ、交渉のシナリオを描いていたのが糸井の所属するマネジメント事務所だった。日本ハムとは過去にマイケル中村、スレッジ、グリンなどの契約交渉でもめ、球団が放出せざるを得なかった「いわくつき」の系列事務所だが、その選択を今になって嘆いても後の祭りだ。

 

 傷心の糸井はその本心を隠し、プロ10年目のシーズンを新天地で迎えることになる。だが「気持ちにムラがあってメンタルに不安があると力が発揮できない」タイプだけに不安は尽きない。オリックスだけでなく3月からのWBCでのパフォーマンスへの悪影響が心配されている。