赤ペン!!赤坂英一】松坂大輔の“死に水”を取るのは俺たちしかいない――。年明けの1月下旬、ナゴヤ球場で松坂の入団テストを行う中日・森監督、松坂の親友である友利編成担当の胸中はそんなところだろう。彼らもひとかどの実績を持つ元投手、今の松坂が戦力になるかどうか、テストする前にある程度見極めはついているはずだ。それでも、テストを受けさせるからには契約することが前提である。

 中日関係者によると、「一部で報じられたように即日合格とはいかないかもしれない。そうすると、いかにも情実入団のようで、批判される恐れもあるから。2月のキャンプで追試を行い、そこで契約となりそうです」。そうしたほうが、松坂の復活ドラマとしては劇的なプロローグとなる。マスコミにも大きく扱われるだろうから、中日としても願ったりかなったりだ。その後、松坂が一軍で活躍できるかどうかはまだ何とも言えないが。

 ヤクルト、阪神、楽天監督時代、野村克也氏は他球団をクビになった選手を何人も復活させ「野村再生工場」と異名を取った。その伝でいけば、中日も様々な大物に現役続行のチャンスを与えてきた伝統がある。

 落合監督時代は巨人を退団した川相(現巨人二軍監督)や小笠原(現中日二軍監督)を獲得。2007年にはオリックスとの契約更改交渉が決裂し、どこの球団も手を出さなかった中村紀洋を春のキャンプでテスト。育成選手として契約し、開幕直前に年俸600万円で支配下になると、日本シリーズでMVPに選ばれるほどの大活躍を見せている。

 高木守道監督時代の1994年は、刑事事件で無期限資格停止処分を受けた元横浜大洋(現DeNA)の中山裕章と契約、抑え投手として96年の球宴に出場できるまでに復活させた。山田久志監督時代の03年には、メジャー移籍に失敗し、中ぶらりんになった元近鉄・大塚晶文を拾い、こちらもクローザーとして奮投した。

 中日の歴代優勝監督の顔ぶれを振り返れば、水原茂、与那嶺要、近藤貞雄、最近では落合と、名門・巨人に放出された人物が実に多い。日本一のソフトバンクを飛び出した松坂が見事カムバックすれば、そうした「反骨の球史」に名を刻むことにもなる。平成の年号が変わる前に、ぜひもう一度「平成の怪物」の雄姿と力投を見たい。