中日が21日、ソフトバンクを退団した松坂大輔投手(37)の入団テストを行うと発表した。来年1月下旬にナゴヤ球場で行われるテストには森繁和監督(63)はじめ現場スタッフ、編成幹部が立ち会うが、この朗報を喜んだのが松坂の恩師である横浜高元野球部部長・小倉清一郎氏(73)だ。小倉氏は中日サイドの計らいに感謝しながら、15年の右肩手術からいまだ復活できないでいる教え子の現状に厳しい見方も示した。

 この日、飛び込んできた朗報に小倉氏は感謝しきりだった。

「中日には本当に感謝しかないですよ。私は(獲得する国内球団は)絶対にないと思っていたから。このまま台湾や韓国へ渡るか、アメリカのキャンプに行ってマイナーリーグや独立リーグで投げれる場所を探して歩くしかないと思っていたから。テストでも、そういう機会を与えてくれた中日には感謝ですよ」

 こう言って同氏は松坂の花道になるかもしれないチャンスを提供してくれた森監督、友利国際渉外担当の尽力、そして中日球団の配慮に謝意を示した。

 対照的に、14年オフの日本球界復帰時に続いてオファーを見送り、調査にすら乗り出さなかった古巣・西武を「とんでもない球団だね。黙って60億円ももらっておいて(本人が困っている時に)何もしないなんて。坊主丸儲けじゃない」と痛烈に批判した。

 球団内部やファンの批判覚悟でリスクを取った中日とそれをしなかった西武。賛否はあろうが、仮に中日が年俸3000万円で獲得しても、グッズ販売や広告宣伝費に換算すればキャンプ早々にもペイできてしまう“ローリスク・ハイリターン”が現状の松坂なのだ。

 とはいうものの、小倉氏は投手・松坂の現状を楽観してはいない。

「今年の春先のキャンプを現地(宮崎)へ見に行ったんだけど、これじゃあ絶対に無理だなという投げ方をしていた。体が前に出て行こうとする時に、左肩を無理に内側へ入れるような投げ方をしていた。そんなことをしたら余計に右肩に負担がかかるし右ヒジも上がっていかない。右肩が回復してあのフォームがどこまで改善しているかが問題じゃない。スピードはもう142~143キロしか出ないわけだから、どこまで正しいフォームで制球良く投げれるかが残された道でしょう」

 こう言って松坂を世に送り出した恩師は野球人生最後のチャンスにかける右腕に厳しくも温かいエールを送っていた。