【伊原春樹 新・鬼の手帳】日本シリーズの戦い方はこうやるんですよ。31日に行われた第3戦は、そんなソフトバンクの試合運びだった。

 まずは初回の攻防。無死から安打の柳田をいきなり走らせたが、ウィーランドはクイックが遅い。そういうデータをしっかり収集して「柳田なら走れますよ」という進言を走塁コーチの村松がしたのだろう。それをきっちり先制点につなげた。

 一方のDeNAは桑原の盗塁死は仕方がないにしても、梶谷の盗塁死はいただけない。あそこは4番・筒香にじっくり打たせた方が相手も嫌がる。結果的に制球に苦しむ武田を助けてしまった。

 4回の攻防も明暗を分けた。ソフトバンクは一死一、三塁から高谷にセーフティースクイズ。これがファウルになると、一走の明石を走らせて二、三塁に。DeNA内野陣が前進守備になったところで、高谷が二遊間を抜く2点適時打を放った。一球一球サインを変え、ウィーランドのモーションの弱点を突いて走れる選手が、ここぞで仕事をして、有利な状況をつくっていく。工藤監督、森作戦コーチらベンチワークで取った2点だった。

 対するDeNAは4回、1点を返してなおも一死満塁の好機に柴田、ウィーランドが凡退。ウィーランドがいくら「打てる投手」だったとしても、2割2分9厘の打者だ。ソフトバンク側も警戒するだろうし、まあ打てないのは仕方がない。だったら柴田のところで代打を出して、勝負をかけるべきではなかったか。

 柴田は初回に柳田のなんでもない二ゴロを後逸(記録は安打)して先制点を許すきっかけをつくった。1番の桑原もいまだにノーヒット。6回二死満塁での右直は惜しかったが、ツイていない時はいい打球も正面に行ってしまう。ラミレス監督は柴田、桑原あたりにかなり期待を寄せているようだが、短期決戦では“逆シリーズ男”となってしまう選手を見切る判断も必要だ。

 (本紙専属評論家)