【赤坂英一 赤ペン】ある捕手出身の評論家によると、「最近の傾向として、高卒の捕手には期待できない」という。なぜなら「城島健司さん(ダイエー、大リーグ・マリナーズ、阪神など)以降、大成したのがほとんどいない。どうにか正捕手に定着したのはヤクルトの中村悠平ぐらい。2014年のドラフト1位で大阪桐蔭から西武に入団した森友哉も、捕手としては伸び悩んだままですから」とのこと。

 また、ある球団の投手コーチは、「高卒の捕手の場合、大学や社会人に比べて、配球やリードについての経験が絶対的に不足している。だから、投手と首脳陣が相当我慢しないと一人前に育てるのは難しい」と証言している。そういえば、近年では珍しい“成功例”の城島についても、昔バッテリーを組んだ工藤公康(現ソフトバンク監督)が「あいつがプロ入り間もないころは随分と辛抱した」と話していた。

 では、26日に行われるドラフトの目玉、広陵の中村奨成はどうだろう。地元球団の広島はすでに1位指名を公言、中村も歓迎の意思を示し、互いに“相思相愛”だとアピールしている。広島入りが実現すれば、達川光男(現ソフトバンクヘッドコーチ)以来の“広島弁をしゃべるスター捕手”誕生の期待も高まる。

 ここで気になるのが、広島の苑田聡彦スカウト統括部長の発言。「中村が三塁手になったら日本一の選手になれる。右にも左にも打てるから」というのだ。さらに「あの肩で三塁から一塁へビューッと投げたらスタンドも沸くだろう」と、守備も絶賛。だからなのか、中村を欲しがっている他球団の関係者は言った。

「広島は恐らく、捕手と三塁手の両方で育成するつもりじゃないか。中村サイドにもそのプランを伝えているはず。どちらのポジションでも先輩との競争になるけど、両方やったほうが打撃を生かせるし、一軍への近道になる。地元の選手だから早くゼニの取れるスターに育てたいだろうしね」

 ちなみに、捕手で入団し、内野手で一軍に昇格したケースには田中雅彦という先例がある。PL学園、近大を経て03年にドラフト4位でロッテに入団。07年、当時のバレンタイン監督に初の一軍スタメンに抜てきされたときは、なんと「1番・三塁」だった。果たして中村が一軍デビューするポジションはどこに…なんてことを書くのは気が早過ぎるかな。