パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦が15日、メットライフドームで行われ、シーズン3位の楽天が2位の西武に4―1で快勝。1勝1敗の五分に戻した。楽天勝利の立役者は、古巣を相手に7回途中3安打無失点と好投した先発の岸孝之(32)。崖っ縁のチームを救った右腕を、本紙評論家の前田幸長氏が分析した。

【前田幸長「直球勝負」】この日の岸は直球の出し入れが完璧だった。同じ直球でも、150キロ近いボールと140キロ前半のボールをうまく使い分けて、打者に的を絞らせなかった。これで勝負どころでのカーブが、ますます効果的になった。

 強力な西武打線を相手に直球は、ほとんどファウルになった。キレ味、コントロールともに最高のものを、追い込まれたこの状況で出せたのはすごい。

 試合前、梨田監督に聞いたところ、則本(昂大投手=26)がこの日のブルペン待機を直訴したそうだ。第1戦で4回7失点とKOされたエースを梨田監督は何とかなだめたが、「あんな則本は見たことがなかった」と立ち直る気配もなく降板しただけに、直訴もやむを得なかったのかもしれない。

 当然、岸も則本の様子を間近で見ている。試合後の岸は「ノリ(則本)の悔しい気持ちもあったと思うので、その分もしっかり勝って、明日の美馬につなげようという気持ちで臨みました」と話したが、則本が悔しさを抱えたまま今季を終えないためにも、ここで負けられないとの思いが投球に出ていた。

 岸自身、7月19日以降、白星には恵まれていなかったが、自身も失点していた。チームに勝ちをつけるには無失点が最高の良薬になる。

 昨オフ、西武からFAで地元・仙台の楽天に移籍した岸には、この日も西武ファンからブーイングが飛んだ。私も2001年オフに、6年間在籍した中日から巨人にFAで移籍した際、古巣のファンからブーイングを浴びたが、それは覚悟の上だった。岸も分かった上で地元に戻る決断をしており、冷静に受け止めていると思う。
 楽天ファンにとってもFAで入った岸は活躍して当たり前と思われている。そのプレッシャーをはね返した岸の好投は、第1戦で菊池雄星に0―10で完敗したチームを徳俵から一気に土俵中央に戻す結果になった。第3戦は五分五分の勝負になる。(本紙評論家)