【上原浩治「中継ぎピッチャーズバイブル」(41)】カブスの上原浩治投手(42)が苦しいメジャー9年目を送っている。8月に首を痛めて故障者リスト入り。復帰したものの、9月に入り、ヒザや足の甲、ふくらはぎが腫れる症状で再び戦線離脱した。その後、シミュレーションゲームに登板したものの、背中に張りが出て、レギュラーシーズン中に復帰することはできなかった。ポストシーズンでの貢献を誓っているが先は見通せない。ベテラン右腕はどう乗り越えるのか。

 上原は残念そうな表情でこう話す。

「前半はすごく良かったんですけどね、後半はそういう体の調子がおかしくなってって感じですかね。自分の体ですから、仕方がない。後半の、大事な時期にっていうのはすごく残念。イライラします」

 今季の前半戦、33試合に登板して2勝4敗2セーブ12ホールド、防御率2・73とまずまずの成績で終えた。しかし、後半戦に入ると疲労の蓄積からか調子が落ちる。オールスター戦前は1本だった被本塁打が9試合で4本と急増。

 すると後半戦10試合目、8月8日(同9日)のサンフランシスコでのジャイアンツ戦で右首を痛めて翌日に故障者リストへ。この時は10日ほどで復帰を果たすも、9月に入って今度はヒザや足の甲、ふくらはぎに腫れが出る原因不明の症状に見舞われ再離脱。2度のブルペン、そして13日にはシミュレーションゲームに登板し復帰間近と思われたが、今度は背中に張りを訴え、投げられない状態になった。

 上原は「行きたい気持ちはありますけどね、こればっかりはあまりにも日にちがなさ過ぎですね」と話しており、レギュラーシーズンでの復帰はかなり厳しい状況だ。それでもわずかなチャンスで結果を出し、「そうなればいい」とポストシーズンでチームの勝利に貢献できる戦力でありたいと思っているが、固まりつつあるブルペン陣の戦力、役割を考えると厳しいと言わざるを得ない。

 WBCに出場するつもりで昨オフから準備、調整を続けてきた好影響か、今季はキャンプ中からストレートに手応えを感じていた。一方、スプリットは本来のキレ、制球とは言えなかったが、それでも開幕から6試合連続無失点と好スタートを切った。しかし、カブスの伝統であるデーゲームの多さ、マドン監督のフレキシブルな投手起用にも対応し続けるも、オールスター戦明けから悪い流れに入ってしまう。

 蓄積疲労が一因になっていると考え、思い切って「怖さはあったけど」と、練習量を落とした。何とかして流れを変えたかったのだ。「走る量を減らしていたが、今だけのことを考えているわけではない。先のことも考えないといけないから」。ところが、若いブルペン仲間が軒並み安定した投球を続けたことで、自らを追い込むことに。

「結果が出ていれば楽ですよ。結果が出ていないから、何もかもがしんどい。決して(自分が)悪すぎるとは思っていないんですけど、特にこのチームはリリーバーの防御率がみんないいので」

 気がつけば、役割が敗戦処理になっていた。ブルペンには抑えをトップにした序列というものが存在するが、それをよく知るだけに「ヤバイ」「後がない」「崖っ縁」「このままいけばクビになる可能性が高い」といった言葉が出てきた。それでもメジャーリーガーであることに誇りを持ち、どんな役割であれ登板に向けての準備を変わらずに続けた。

 マドン監督は今季のブルペン投手の陣容を見て、抑えのデービス以外はフレキシブルに起用する判断を下し、今に至っている。その結果、上原はデービスの代役となるクローザー、回またぎ救援、無死満塁での火消し、敗戦処理とほとんど全ての役割をこなした。上原は離脱前、こう話していた。

「その時の調子のいい人を使うというのが監督の方針。(今の役割には)そらあ、ストレスを感じますよ。今は負け試合でしか投げていないのでね。でも、結果を出しているやつがやっぱり勝っているんですよ。今、自分がこういう立場にいるのは、結果を出していないから。だからこそ結果を出していかないといけない」

 カブスで、選手たちのメンタルケアを行っているダーネル・マクドナルド氏は上原についてこう話す。

「コージにとってはとてもタフな状況だ。それでも、フィニッシュ・ストロング!という気持ちを忘れてはならない」