元広島・廣瀬純氏「4番の重圧を僕に打ち明けてくれた鈴木誠也」

2017年09月28日 11時00分

結果を残した鈴木

【始まりの鐘が鳴る~カープ日本一への道~廣瀬純】8月下旬、右足首の剥離骨折により今季絶望が決まった鈴木誠也。日本一を狙うチームにとっては痛い離脱となってしまいました。

 ケガした8月23日まで115試合で打率3割、26本塁打、90打点。リーグMVPに加え、打点、打率の2冠も夢ではありませんでした。本人にとってもファンにとっても「悔しい」のひと言でしょう。昨季こそ“神ってる”で話題になりましたが、今季はチームの「真の4番」として本当に成長したと思います。

 実は誠也が4番に抜てきされた直後、本人に「4番の重圧」を聞いてみました。すると彼は「(打線を)つなぐ意識しかないので、全然、打順は気になりません。本当ですよ」と涼しい顔をしていました。ところが交流戦終了後の6月末、試合前に同じ質問をすると、4番が勝敗を分ける重要な役割であることを思い知らされたのでしょう。「今は4番のプレッシャーはすごくあります。自分が打てなくて試合に勝てないと悔しいです」と顔を引きつらせながら語っていました。そんな重圧の中、8月下旬まで打率3割前後を維持しました。ケガをしたとはいえ、この経験は来季以降に必ず生きるはずです。

 4番としてプレーする中で仲間を助ける気持ちが強くなったことも評価できます。シーズン序盤、4月6日の中日戦(ナゴヤドーム)でこんなことがありました。この日の広島は大瀬良が先発でした。彼は2015年5月以来、約2年ぶりとなる先発での勝利に向けて序盤から好投。6回で降板したものの、チームは2点リードのまま9回二死二塁までこぎつけました。ところが、最後の打者となるはずだったゲレーロの右前への打球を誠也が積極果敢に捕球を試みたことで後逸(記録はヒット)。このプレーを引き金に同点とされ、大瀬良の白星は消えてしまいました。

 試合後の誠也は自らのプレーに意気消沈。チームが延長戦勝利で歓喜する中、ひとり大瀬良への責任を感じていました。見かねた私は翌日、試合前練習でそのプレーについて、こう言いました。「試合でのミスはプレーで取り返すしかない。大瀬良の気持ちを思うなら、今度は誠也が大瀬良に勝ちをつけられるプレーや打撃をすればいいんだよ」。彼は沈痛な面持ちながら「そうですね」とつぶやきました。

「大丈夫かな」。当初は私も誠也の“後遺症”が気になりました。でも、心配は杞憂でした。その後の彼は大瀬良が投げる試合でほぼ確実に活躍。いつの間にか「大瀬良登板=誠也猛打」という図式をチーム内に浸透させたのです。ミスから生まれたこととはいえ、仲間との信頼関係を築き上げたのは大きい。誠也にとっても自信になったと思います。

 新人として入ってきた13年の春季キャンプ。僕は彼の強肩、パンチ力を見た瞬間、「同じ外野手として抜かれるならコイツだ」と感じさせられました。それから4年でこの成長ですからね。守備ではまだ粗削りな一面もありますが、WBCで日本代表に選出されたように、彼のポテンシャルは相当高いです。ケガでポストシーズンの戦いに出られない分、彼には来季さらなる飛躍を期待したいです。

 ☆ひろせ・じゅん 1979年3月29日生まれ。大分県出身。佐伯鶴城高―法大。大学時代の2000年にシドニー五輪野球日本代表を経て、同年ドラフト逆指名で広島入団。10年に打率3割、ゴールデングラブ賞を受賞。13年にはプロ野球新記録の15打席連続出塁をマークした。16年に現役引退。17年から中国放送(RCC)の野球解説者として活躍中。通算成績は978試合で打率2割7分3厘、51本塁打、253打点。右投げ右打ち。