元広島・廣瀬純氏が語る 応援歌引き継いでくれた弟分・菊池涼介「ジブリ」でストレス解消も…

2017年09月21日 11時00分

苦しみながらのシーズンだった菊池

【始まりの鐘が鳴る~カープ日本一への道~廣瀬純】リーグ連覇の美酒に酔いしれる裏で、今季悔しい思いをしている主力もいます。「始まりの鐘が鳴る…」で始まる僕の現役時代の応援歌を引き継いでくれ、今でも個人的に弟のようにかわいがっているキク(菊池涼介内野手=27)です。

 圧倒的な守備力でチームをけん引も、打撃面で低迷。昨季3割以上あった打率(3割1分5厘)は今季2割7分6厘止まり(19日現在)。シーズン序盤の3、4月に至っては打率2割5分台という極度の不振に陥りました。

 この不振には明確な理由がありました。今春に開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)への出場でした。

 キクは日本代表の主力として期待されていたため、年明けの自主トレから急ピッチで体づくりを敢行。同じくチームから代表に選ばれた広輔(田中)や誠也(鈴木)とは異なり、本戦ではレギュラーとしてフル参戦を余儀なくされました。

 その代償は想像以上に大きかったといいます。今年3月下旬、WBCを終えたキクと二人きりで話す機会がありました。体調について聞いたところ、普段周囲に弱音を吐かない男が珍しく真顔でこう漏らしてきました。

「純さん、実は全然体が動かないんですよ。疲れがたまって抜けないんですよ」

 蓄積疲労が限界に達していたのだと思います。両太ももを含めた下半身には強い張りが襲い、WBC開幕前に絞り切った体重もさらに2キロ以上減っていました。戦線離脱の一歩手前。まさに瀕死の状態だったのです。

 長いシーズンを考えれば休養という選択肢もありましたが、彼は攻守の要。「休みたい」と言えば、チームへの影響は計り知れません。本人もそのことは十分わかっていました。そんな体調のまま迎えたシーズン。打撃面で精彩を欠くのも無理はなかったのです。

 幸い、シーズン序盤からキクを挟む1番・田中と3番・丸、さらには4番・誠也も好調をキープ。チームの開幕ダッシュも重なり、彼の不振が際立つことはありませんでした。今思えば、幸運のひと言に尽きます。本人に4月を振り返ってもらうと「(自分が調子が良ければ)もう5勝、上乗せできる試合もありました」と厳しい口調で話していました。

 全力でプレーできなかった序盤の悔しさをCSで晴らしたい。そんな思いが強いからでしょう。シーズン終盤からは外出を極力控え、食事も体への負担を考慮しながら節制を心がけているといいます。

 そんなキクの現在のストレス発散法は自宅での「ジブリ作品観賞」。連日、寝る前にハマっているようで、先日は「紅の豚」の名シーンを見逃してしまい、悔しがっていました。

「有名な『飛ばない豚はただの豚だ』のセリフをどうしても聞きたかったんですけど、疲れていたせいもあって、その名ゼリフを聞く前に爆睡してしまったんです。もう一度見ないといけませんね(笑い)」(菊池)

 心身ともに余裕が感じられるようになってきました。ポストシーズンでは期待が持てそうです。

 ☆ひろせ・じゅん 1979年3月29日生まれ。大分県出身。佐伯鶴城高―法大。大学時代の2000年にシドニー五輪野球日本代表を経て、同年ドラフト逆指名で広島入団。10年に打率3割、ゴールデングラブ賞を受賞。13年にはプロ野球新記録の15打席連続出塁をマークした。16年に現役引退。17年から中国放送(RCC)の野球解説者として活躍中。通算成績は978試合で打率2割7分3厘、51本塁打、253打点。右投げ右打ち。