【大下剛史・熱血球論】広島のリーグ連覇の立役者を一人だけ選ぶとするなら、迷うことなく丸佳浩の名前を挙げる。開幕から全試合にスタメン出場し、打率3割8厘、22本塁打、90打点の好成績もさることながら、広い守備範囲、常に先の塁を狙う積極性と、走攻守すべての面でチームをけん引した。リーグMVPは記者投票なのでどのような結果になるか分からないが、十分にその資格はある。

 何より好感が持てるのは野球に取り組む真摯な姿勢だ。決して派手なタイプではないが、オフも黙々とジムで筋力トレーニングに励み、キャンプはもとよりシーズンに入っても練習から妥協しない。まだ28歳ながら“大人のプレーヤー”の風格さえ漂わせるなど、体だけでなく精神面でも着実に成長している。

 昔から野球で重要なのは捕手―二遊間―中堅を結ぶセンターラインだと言われてきた。広島に当てはめると会沢、菊池と田中、丸がその役割を果たしているわけだが、中堅手の丸は守っている姿からチームに安心感を与えている。広島の歴代外野手の中でもトップクラスで、ミスター赤ヘル、山本浩二の全盛期よりも動きはいいと思う。集中力も球際の強さも申し分ない。

 2007年の高校生ドラフト3巡目指名で千葉経大付高から入団して、ちょうど10年目。正直言ってここまでの選手になるとは思わなかったが、広島らしいたたき上げで欠くことのできない野手の大黒柱となった。

 37年ぶりのリーグ連覇を達成し、さらに33年ぶりの日本一へとチームを導けば、選手としてのハクもつく。満足せずに上を目指す姿勢を貫けば、あと10年は第一線で活躍できるはずだ。順調なら来季中に国内FA権を取得するが、OBとしては現役だけでなく、将来的に指導者としても広島一筋でやってほしい。そう思わせる選手である。(本紙専属評論家)