37年ぶり連覇の緒方監督が語る「進撃の赤ヘル」理論

2017年09月20日 11時00分

祝勝会では緒方監督と新井(左)が頭から日本酒を浴びる一幕も

 優勝マジック1としていた広島が18日、甲子園での阪神戦に3―2で競り勝ち、2年連続8度目のリーグ制覇を決めた。リーグ連覇は古葉竹識監督時代の1980年以来37年ぶりで球団史上2度目の快挙だ。優勝の瞬間にタオルで涙を拭い、思い出の地で11度宙に舞った緒方孝市監督(48)がチームを率いて3年目。ライバルを徹底的に研究し、勝利のために非情な決断もいとわない、指揮官の素顔に迫った。

 気がつけば涙があふれていた。甲子園は自身が1988年9月17日にプロデビューを果たし、初安打初本塁打初打点を記録した思い出の地。球団史上2度目となるリーグ連覇を成し遂げた緒方監督は「心からうれしいです」と声を震わせた。

 終わってみれば今年も圧勝だった。救援陣がへばり、4番の鈴木が右足首骨折で離脱した8月こそ12勝13敗2分けで緒方政権下では1年目の2015年3・4月(9勝16敗)以来となる月間負け越しを喫したが、最後は総合力でライバルを突き放した。大型補強でV奪回を期した巨人を16勝7敗と圧倒。5月6日に9―0から逆転負けする屈辱を味わった阪神にも5~7日の直接対決で3戦連続逆転勝ちして引導を渡し、この日も横綱相撲で寄り切り勝ちだ。

 徹底的に相手を研究した成果でもある。緒方監督は「選手はもちろん、スコアラーの働きも大きい」と言う。就任3年目の今季は「欲しいデータが注文しなくても届くようになった」。対戦前の予習に多くの時間を割くようになったのは、就任1年目に当時の巨人・原監督、阪神・和田監督に“経験の差”を見せつけられたことがキッカケだったという。ナイター終了後でも録画した次カードで対戦するチームの試合を欠かさず見て手の内を研究。“おかわり”することもざらで、チーム関係者は「うちの監督は最低でも1日2~3試合やっている」と話す。

 采配や用兵の糧となっているのは試合から得るデータばかりではない。ヒットしたマンガやアニメから学ぶこともある。お気に入りの一つがアニメ「進撃の巨人」のスピンオフ作品「悔いなき選択(後編)」に出てくるセリフだ。調査兵団の団長になる以前のエルヴィン・スミスが、入団して間もないリヴァイに向けてこう言う。

「よせ、後悔はするな。後悔の記憶は次の決断を鈍らせる。そして決断を他人に委ねようとするだろう。(中略)結果など誰にも分からないんだ。一つの決断は次の決断のための材料にして初めて意味を持つ」

 コーチに意見を求めたり、進言を聞き入れることはあっても決断は自分で下す。そうしないと失敗の責任を他人になすり付けるようになるからだ。

 一つの決断を次の決断のための材料にした分かりやすい例が、8月末のDeNA戦での守護神交代劇だろう。同22日の初戦で完投目前の野村が5―2の9回無死一塁から筒香に2ランを被弾。抑えの今村もロペス、宮崎に連続ソロを浴びてサヨナラ負け。すると緒方監督は「抑えは今村のままでいいか悩んでいたが、ハッキリと答えが出た。この先の戦いは抑えを中崎に託す」と決断した。

 抑えに戻った中崎は翌23日に1点差を守れず、24日も同点の9回にサヨナラ打されて球団初の同一カード3連戦3連続サヨナラ負けを喫した。さすがの指揮官も「(宿舎の)ホテルに帰ったら屋上から飛び降りないけんかもしれん」とショックを受けていたが、自身の決断は貫いた。結果として4日間の“リフレッシュ休暇”を与えられた今村は球威を取り戻し、中崎も抑えに定着。9月1日から9連勝するラストスパートにつながった。

 昨年は6月に家族の一員となった愛犬を「優勝」と名づけ、チームを25年ぶりのリーグ制覇へと導いた。33年ぶりの日本一を目指す今季は新たなペットとして犬かウサギを飼って「日本一の『一(イチ)』」と命名するプランまで練っていたが「遠征中に誰が面倒を見るのか」という問題に直面して断念。それでも80年以来となるリーグ連覇を達成した。

 ゲンを担がなくても鍛え上げられた選手たちが苦境を打開してくれる。黄金期に突入した赤ヘルの進撃は止まらない。