【インハイ アウトロー 加藤伸一】 今年のソフトバンクで一番成長した投手は東浜だろう。16勝4敗、防御率2・67で勝率はジャスト8割。16の勝ち星はもちろん2桁の貯金をつくったことは立派だ。何よりも和田や千賀、武田が離脱する中で先発ローテーションを守り抜いた。

 東浜とは入団1年目に二軍投手コーチ、2年目には一軍投手コーチとして接してきたが、当時は直球の球速も140キロ台前半と遅く、球が抜けることが多かった。即戦力ドラ1の期待を受けて入団したものの、プロの壁に苦しんでいた。

 それが昨年9勝を挙げて今季の大ブレークだ。何よりボールが力強くなり、抜けていた球も低めに集まるようになった。そして投球も丁寧で粘り強い。本人にも尋ねてみたら「体の芯がしっかりしたことでボールに力が伝わるようになった。コースの四隅を狙っていたのが、自信を持って投げられるようになった」と話していた。

 2015年オフに単身米国へ自主トレに行き、本格的にトレーニングするようになったことが契機となったという。工藤監督からもトレーニングに関する指導を受けて、周囲が驚くほどの努力を積み重ねてきたと聞く。そういった成果であることは間違いない。

 近い年齢にはセンスの塊のような武田、驚くような直球と変化球を駆使する千賀がいる。東浜が一番年上ではあるが、ブレークは彼らのほうが早かった。“ウサギと亀”ではないが、今季の東浜の活躍は周囲にも刺激にもなっているだろう。

 新聞に掲載されたコメントを見ていると、タイトルよりも「チームの勝利」と口にしている。謙虚な選手なので気持ちも分かるが、タイトルは残るもの。優勝が決まった以上、個人的には狙ってほしいと思っている。(本紙評論家)