阪神は12日の巨人戦(甲子園)に延長12回、5―5で引き分け。2回までの5点リードを守れなかった。先発の藤浪晋太郎(23)が4回に、またもや死球をきっかけに突然崩れたのが響いた。同じパターンを繰り返す右腕。13日、球団内では、その原因として2年前のあの人との一件を持ち出す声まで出始めた。

 チーム3年ぶりのシーズン勝ち越しは決定したものの、序盤の5点先制もむなしく徒労感だけが残ったドロー劇。金本監督は「勝ちきれない? 微妙なとこかな。(9回に追い付かれた)ドリスもひっくり返されないようにはしたし、粘ってくれたからそこは評価」など疲労困ぱいの救援陣を擁護したが、ケチのつき始めは4回途中4安打4失点で降板した“悩める右腕”藤浪だった。

 5―1で迎えた4回、藤浪は先頭の坂本の背中付近に死球。阪神ファンからも激しいブーイングを浴びると例の“ビョーキ”が顔をのぞかせる。動揺→ピンチ拡大↓痛打という毎度おなじみの突然の乱調ぶり。ベンチは慌ててタオルを投げるしかなかった。「感じとしては悪くなかっただけに、もどかしい。野手の方が序盤から点を取ってくれて楽な気持ちで投げられる状況を作ってもらったのに、試合を作ることができずに申し訳ない」と藤浪は肩を落とした。

 5月4日のヤクルト戦以来、実に4か月以上も白星のない藤浪に金本監督は「ぶつけてから腕が振れなくなる。(球が)抜けだすとダメになる」と嘆けば、香田投手コーチも「(過去)4試合とも同じような繰り返しなんで、そこは何とかしないといけない。死球を与えた後のことは自分で乗り越えてくれないと」とバッサリ。今季4度目の二軍落ち決定でクライマックスシリーズでも“戦力外”が確実だ。

 何をやっても復調の兆しが見えない藤浪にはチーム内からこんな声まで出だしている。「藤浪がおかしくなったのも黒田のせいだ。黒田があの時、藤浪を脅かさなかったら、その後の状況も変わっていたと思う。あれから藤浪はデリケートになってしまったんだ」(球団関係者)。2015年4月25日の広島戦(マツダ)2回一死一塁。打者はメジャー帰りの投手・黒田。ここで先発の藤浪はバントの構えをする黒田に2球続けてきわどい内角球を投じた。これに黒田が怒り、マウンドに詰め寄った。藤浪は帽子を取って謝罪したが、両軍がグラウンドに集まる騒ぎに発展した。この一件はネット上などでも「藤浪が右打者に内角球を投げられなくなった原点の試合」といわれてきたが、球団サイドも2年前の「騒動」に今の原因があると思い始めたのだ。

 黒田にとってははた迷惑な話だろうが、それだけ藤浪を心配する球団も追い込まれている証拠。2年前のトラウマが今もなお続いているのか…。