【赤坂英一 赤ペン!!】「たとえ優勝できても、今年のCSは去年のように簡単には勝ち抜けないかもしれない。投手陣をもう一度抜かりなく整備しておく必要がある」

 1979、80年以来、37年ぶりの連覇を目前に控えた広島の内部から、こう先行きを危惧する声が聞こえてくる。昨季のCS最終ステージはDeNAを4勝1敗と一方的に破ったものの、ここにきて投手陣が先発もリリーフも不安を露呈。首脳陣の間では「この勝負どころで“黒田ロス”の影響が出てくるとは」という声も上がっている。

 マジックが点灯したり消えたりしていたころに目立ったのが、今村や中崎ら抑えが打ち込まれた場面。8月22~24日、3試合連続で逆転サヨナラ負けしたDeNA3連戦では、この2人と中田が敗戦投手となっている。

 今村で思い出すのは2011年、長野の顔面に死球をぶつけ、左頬骨を骨折させたあと、しばらく内角を突けなくなったことだ。当時の大野投手コーチが「勝負の世界なんやから遠慮するな」と励まし、ふたたび長野を打ち取るまでに約2か月を要している。

 翌12年は自己最多の26ホールドを挙げるも14、15年は長い二軍暮らしを強いられた。今年こそ盤石の信頼を得るためにもCS、日本シリーズに向けて、しっかり再調整してもらいたい。

 中崎はヒゲを伸ばすのも結構だが、リリーフで使われ始めたころの鋭い目つきをまた取り戻してほしい。もともと童顔で迫力に欠けるため、野村前監督が「マウンドではもっと怖い顔をしろ」と助言。当時は常に、眉間にしわを寄せて打者をにらみつけていたものだ。

“黒田ロス”の影響が最も大きいのは先発の大瀬良かもしれない。今季は8勝を挙げて1年目の14年以来の2桁勝利も見えていたのに、8月は月間防御率6・49と打ち込まれ、8月30日の巨人戦で負け投手となって二軍落ち。一軍復帰した10日の中日戦では打線の援護もあり、約1か月ぶりの9勝目を挙げたが、真価を問われるのは次回の登板だろう。

 黒田が復帰した15年の沖縄キャンプ、真っ先にツーシームの伝授を願い出たのが大瀬良だった。懇切丁寧に指導した黒田は「ツーシームばかりじゃなく、ツーシームを生かす球種も投げるように」と教えている。いまこそ“男気”から伝授された技術と精神を思い出す時だろう。