<広島3-0中日(8日)>一兎を追って三兎を得るか。広島の薮田和樹投手(25)が中5日で臨んだ8日の中日戦(ナゴヤドーム)で恐竜打線を6安打に抑え、14勝目(3敗)を今季2度目の完封で飾った。ワインドアップを封印し、セットポジションからの投球にしたのが見事にはまった。緒方監督も「前回の反省を生かしてセット(ポジション)で安定した投球を見せてくれた。(前カードの阪神戦でフル回転した)中継ぎを休ませられたのは本当に大きい」と絶賛の内容だった。

 今季はリリーフからスタートし、5月30日の西武戦から先発に転向。7月22日の中日戦まで先発で7連勝するなど、今や首位独走の原動力だ。この日、リーグ単独トップの15勝目を挙げた巨人・菅野を1差で追走。2015年の前田健太(現ドジャース)、16年の野村祐輔に続く最多勝のタイトルも夢ではない。

 入団から2年間で計4勝の右腕が飛躍した裏には、担当だった松本スカウトからの心に響くアドバイスがあった。「150キロを超える球にコントロールはいらない。一流と言われる3割打者も7割は失敗する。真ん中に投げれば相手も打ち損じるから自信を持って投げろ」。制球への不安を意識するのではなく思い切って腕を振る。その姿勢を貫き、先発転向後も順調に白星を積み重ねた。チーム全体で4完投しかない先発陣にあって、うち2度は薮田の完封だ。

 現在の投球回数は115回1/3。残り14試合で登板機会は2度か多くて3度と見られ、規定投球回数のクリアは難しい。ただ、規定投球回数未満で最多勝のタイトルを獲得すれば1988年の伊東昭光(ヤクルト)、05年の下柳剛(阪神)以来の“快挙”。薮田は最高勝率のタイトル争いでも8割2分4厘で巨人・田口の8割(12勝3敗)を上回っている。薮田は「まだまだ自分は最多勝という立場ではないと思うので、自分の役割を全うしてチームに貢献したい」と控えめだが、連覇の立役者となることで2つのタイトルも転がり込んできそうだ。