ロッテの涌井秀章投手(31)が4日、自身2度目のFA権の資格取得条件を満たした。2014年に西武からFA移籍し、昨オフに3年契約が終了。今オフの動向が注目されていたが、本紙の取材でFA権を行使しての退団が決定的であることが分かった。今後について「一人では決められない。家族とより良い人生になるようにしっかり考えていきたい」と語った涌井の本命球団は――。

 今季の涌井は22試合に先発して5勝9敗、防御率3・88。不振が続き、本来のピッチングは影を潜めていたが、2日の日本ハム戦(ZOZOマリン)では2011年の西武時代以来、6年ぶりの完封勝利を挙げた。

 まだ31歳と、老け込む年齢でもない。西武では横浜高から高卒1年目でいきなり一軍デビューし、1年目から13試合に先発。2年目の06年から10年まで5年連続で2桁勝利を挙げるなどの実績はもちろん十分で、08年の北京五輪、09年と13年のWBCには日本代表として出場。09年には16勝6敗、防御率2・30の成績で沢村賞に輝いた。

 その後は西武フロントとの確執などもあり、自身の入団時に西武の監督を務めていたロッテ・伊東監督に請われ、14年に1度目のFA移籍。移籍初年度こそ8勝12敗と負けが先行したが、15年は28試合に先発し、15勝9敗で最多勝のタイトルを獲得するなど復活。16年も10勝7敗と2年連続で2桁勝利を挙げて、ロッテでは31年ぶりとなる2年連続でのAクラス入りに大きく貢献した。

 そんな涌井がチームを離れる決断をした理由の1つには、自身をロッテに呼んでくれた伊東監督の退任がある。ただ、それだけではなく、涌井が強く望む「優勝」から遠のいたことも一因。昨オフはデスパイネ(現ソフトバンク)の残留を球団に要望する一方で、球団サイドにたびたび戦力の補強を要求していたという。

 今季は退団を示唆する発言をする場面もあり、前半に行われた投手会の席では「来年は俺はいないから」という趣旨の発言を行っていた。また、今季から後輩投手に熱心に助言をし、食事に誘う場面も目立っていた。早い段階で今季限りでの退団の決意を固めていたと見られる。

 今オフは国内、海外への移籍が可能となるが、行き先はどこになるのか。「家族としっかり考えていきたい」と話しているように、夫人でモデルの押切もえ(37)の意向も大事になってくるが、かつて米大リーグへの憧れを口にしたこともあったという涌井だけに、メジャー挑戦の可能性もまったくないわけではない。今季はパドレスを含む大リーグの複数球団が涌井の登板の視察を行う場面も見られた。

 国内ならば中日、DeNA、阪神など複数球団が獲得に名乗りを上げそうだ。とりわけ昨オフのFA市場で、山口俊投手(30=巨人)の獲得に失敗し、右の先発投手不足が著しい中日が、球界関係者の間では本命視されている。また涌井の母校・横浜高出身者を熱心に獲得しているDeNAも手を挙げると見られる。

 いずれにせよ海外、国内複数球団による大争奪戦となることは間違いない。今後の涌井がどこへ行くのか、その動向が注目される。