“電車通勤”中に交流も…西武強さの裏にファンとの「距離感」

2017年09月10日 16時30分

ファンの声援に応える菊池(左)とオーティズ(2012年9月)
足で稼いで20年 外国人選手こぼれ話 広瀬真徳

 パ・リーグの2位争いが面白くなってきた。

 夏休み前はソフトバンク、楽天の“2強”から大きく離されていた西武が7月後半からの13連勝などで猛追。楽天の失速もあり、気がつけば2位に浮上し、楽天とシ烈な2位争いを繰り広げている。

 ここ3シーズンBクラスに低迷し続けただけに、西武関係者やファンは「今季こそ1つでも上の順位を」という思いが強い。そこで何人かのファンにチームの魅力を聞いてみると、強さ以上にある意外な理由を挙げた。それが「選手とファンの近さ」というのである。

 他球団の多くが一軍と二軍の球場が離れている中、西武だけは一軍の試合が開催されるメットライフドームと二軍戦が行われる西武第二球場が隣接している。選手寮も併設されているため、ファンは一、二軍を問わずお目当ての選手に会いに行きやすい。

 加えて、西武ファンは外国人選手と、球場外でも気軽に交流できる。助っ人が“電車通勤”しているからだ。

 外国人選手が住む宿舎が西武線沿線にあるため、選手の練習時間に合わせれば、ファンが助っ人に遭遇する確率は高い。

 少し前の話になるが、2012~13年に在籍したホセ・オーティズは電車内で頻繁に「即席サイン会」を開催していた。ファンにもみくちゃにされながらも終始笑顔で交流を深めていた。一度本人に「電車内では断ってもいいのでは」と声をかけたことがあるが、彼は笑ってこう言った。

「ライオンズを好きになってくれるのであれば僕は気にならない。それに、世界中を見渡しても、電車内でファンと直接交流できるのはここ(西武)ぐらい。僕はファンの声を力にするタイプだし、電車通勤は楽しいよ」

 現在チームに在籍する助っ人がオーティズと同じ気持ちかはわからない。それでも電車内で選手を間近で見れば、子供だけでなく大人でも親近感が湧く。どんなファンサービスよりも心に残るはずだ。

 そんな距離感だからだろう。西武は8月下旬、球団公式サイトを通じて本拠地試合で行う選手とファンの「ハイタッチ」について言及。選手の手を強く握ったり、引っ張る行為を行わないでほしい、という異例の通達を出した。

 選手とファンの間にルールは必要とはいえ、この西武独特の「親しみやすさ」。チームの躍進に一役買っているのかもしれない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。