がんからの復帰めざす広島・赤松の「今」

2017年09月01日 11時00分

赤松は笑顔でインタビューに答えた

 がんからの復帰を目指している広島の赤松真人外野手(34)が地道な練習に励んでいる。1月に胃がんの手術を受け、7月に三軍へ合流。練習再開から約1か月半が経過した。機動力の赤ヘル野球に欠かせない“足のスペシャリスト”はどんな気持ちで、黙々とトレーニングを続けているのか。「ステージ3」のがんを宣告された男が闘病生活から現状、さらにはV2ロードを突き進むチームメートへの思いを本紙に打ち明けた。

 ――7月11日に練習を再開して1か月半がたった

 赤松:レベル(強度)は「弱」だが、問題なく体を動かせている。今は午前中で練習を終えているが、これからマシンで打撃を行うなどメニューも増えて練習時間も延びてくると思う。

 ――体の状態は

 赤松:抗がん剤治療の後遺症で手足にしびれが残っている感じ。キャッチボールにしてもへなちょこな球になってしまう。それに感覚の鈍りもあって軽めのノックを受けているときも足が上がっているように感じるのに、実際はあまり上がっていなくてつまずいてしまったりする。筋力も落ちて鈍っているから余計変な感じがする。筋力は元の状態に戻るまで通常3か月程度かかるみたい。僕の場合、胃を切っているからそれより遅いかもしれない。筋力が戻ってきたときにこのしびれでもやれるのかどうか、まだ分からないところ。

 ――食事制限などはあるのか

 赤松:普通に取れているけど、消化にいいか悪いかでやめておこうかなというのはある。ラーメンとかは控えているかな。「かんすい」(食品添加物)が消化に悪いみたいで。ゆっくりよくかんで気をつけて食べるようにしている。ただ、胃は半分になっているのに術前と変わらない量を食べている気がする。今まであまり食べてなかったのかな(笑い)。

 ――中学校時代の同級生で野球部仲間だった歌手の倖田來未(34)から連絡もあった

 赤松:病気を発表(昨年12月28日)した後に「あんたは運が強いから、大丈夫やと思うけど、しっかりせんとあかんよ。気張っときいや」といった内容のメッセージをLINEでもらった。

 ――闘病生活の中で新たな趣味も見つけたとか

 赤松:ロードバイクを買って気晴らしに走ったりした。もともと家の近くの川を散歩していたけど、ここを自転車で走ったら気持ちいいんだろうなと思って始めたのがきっかけ。歩いては行けないような場所にも自転車だと行けるし。ずっと走っていられるし、苦にならない。楽しさが強くて、いい汗をかいて運動にもなる。降りたときの脱力感はものすごいけどね。なかなかキツイ(笑い)。

 ――気分転換にはもってこいだ

 赤松:抗がん剤治療をやると、1週間くらいはしんどい。それでちょっと良くなってきたなというときに、自転車に乗って風を感じるとしんどさが吹っ飛ぶ。散歩していると、どうしてもいろいろ考え事をしてしまうけど、自転車はスーッと走って遠くを眺めたりしてるといろんなことを忘れられる。最近乗れてないから、また乗りたい。乗ってるとパーツを付けたりカスタムしたくなる。

 ――チームは今季も強さを発揮している

 赤松:固定されているレギュラー陣が引っ張っているから強い。それに新井さん、石原さんら周りのベテランがついていっている。引っ張っている選手は1人ではなく、何人もいるから全員がついていきやすい。すごくいいチーム。

 ――リーグ連覇に近づいている

 赤松:続けないと意味がない。昨年優勝したけど、今年はダメでしたではね。だからこそ今年もカープはすごいと思う。

 ――今季は昨年果たせなかった日本一が最終ゴール

 赤松:もちろん。日本一は経験していないから目標にしてほしい。「強い」ということを頭であり、体に覚え込ませないと成長はないんじゃないかな。去年優勝したという「自信」はみんな持っているけど、同時に日本一になれなかった「悔しさ」だったり「弱さ」というのも感じた。日本一になれば、もっと自信を持てるし、今後の人生にも生きてくる。「あの舞台でやったんだ」という自信で緊張をほぐせる。

 ――「代走の切り札」として代役を務めている野間へのメッセージは

 赤松:今のうちにピッチャーの癖であったり、配球であったり、モーションを盗む技術を固めておいてほしい。野間自体はレギュラーになる力を持った選手なので、そのチャンスが巡ってきたときに必ず生きてくる。

 ――最後に自身の目標は

 赤松:野球をするということ。一軍の試合に出ることも、二軍戦でも。今、野球をしてないから。そのレベルに達していない。病気になって普通が普通じゃなくなった。みんなは「野球ができなくてかわいそう」と思うかもしれないけど、自分にとって野球は二の次になった。当たり前だけど自分の命が第一だからね。やらなくてもいいと言われた抗がん剤治療もやった。手足にしびれが残るかもしれないと言われたけど。だからこそ、復帰というより野球ができる体にしたい。

【がん発見からの経緯】赤ヘルの誇る“足のスペシャリスト”赤松は昨季、89試合に出場。代走や守備固めが主だったが、打率3割6分8厘、12盗塁をマーク。6月14日の西武戦ではNPB史上初となるコリジョンルール適用によるサヨナラ安打を放つなど、名バイプレーヤーとして25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。オフには優勝旅行、優勝パレードにも参加したが、昨年12月15日に広島市内の医療機関で人間ドックを受診した際に胃がんが発見された。同28日、会見を開いて「初期の胃がん」と公表。2017年1月5日に胃の半分を摘出する手術を受けた。術後「ステージ3a期」だったことが分かったため、半年にわたる抗がん剤治療を開始した。その後、7月の血液検査で再発が見られなかったため同11日、三軍に合流して練習を再開した。

 ☆あかまつ・まさと 1982年9月6日生まれ。京都市出身。182センチ、75キロ。右投げ右打ち。京都・平安高2年時に投手兼外野手で春の甲子園大会に出場。立命大で野手に転向し、2004年のドラフトで5位指名された阪神に入団。05、06年と2年連続でウエスタン・リーグの打率1位に輝き、07年オフにFA移籍で阪神入りした新井貴浩の人的補償で広島に移籍。50メートル走5・5秒の俊足と遠投125メートルの強肩を生かした守備力でチームに貢献し、07年にはファン投票でオールスター戦に初選出され、10年にはゴールデン・グラブ賞(外野手部門)を受賞した。