剛腕の復活はまだか。二軍調整中の巨人・澤村拓一投手(29)が24日、イースタン・ヤクルト戦(東京ドーム)の8回に5番手で登板。高橋由伸監督(42)も視察に駆けつけたが、1イニング2安打1四球で2失点とパッとせず、今回の昇格は見送りとなった。当初は今月中旬の一軍合流を見込まれながら、いまだ二軍でくすぶる右腕。斎藤雅樹投手コーチ(52)が示した昇格の条件とは…。

 一軍本拠地で行われたナイター二軍戦。名古屋から帰京した由伸監督と村田真ヘッドコーチが姿を見せた理由は一つ。今月に入ってようやく実戦復帰を果たした澤村の状態確認だった。

 だが、8回に5番手で登板した右腕の投球内容はいまひとつ。球速は150キロを記録したが、配球は直球一辺倒。制球に苦しみ、二死から四球を与えると、そこから連打を浴びて2点を失った。

 ただ、試合後の由伸監督は意外にもサバサバ。「基本は真っすぐがどれぐらいいい球がいくかでしょう」と見極めのポイントを示すと、現状については「もう少しかな、という感じですね」。村田真ヘッドは「(実戦では)初めての連投やったからな。明日トレーナーに聞いて、肩の状態がどうなのかやな」とした。

 昨季は守護神として37セーブを記録し、初タイトルも手にした右腕だが、今季は3月4日の日本ハムとのオープン戦でわずか1球で危険球退場。その後に右肩違和感を発症して離脱した。その後、今月6日に155日ぶりの実戦復帰を果たし、この日が6戦目だった。

 先月中旬には、鹿取GMが澤村本人と面談。その際に同GMは「8月半ば」との昇格メドを示していた。だが、現場は一貫して復帰に慎重な構えでいる。前日に斎藤投手コーチを直撃した際も、「報告は逐一聞いています。でも、もう少しかかるかな。こっちとしては、そこまで急いではいない状況です」と早期の昇格には否定的だった。加えて
、「一軍では毎回1イニングというわけにはいかない。2イニング投げてもらうときもあるから、下でまずは投げてから」と連投テストに続き、イニングまたぎを想定した2次試験を課していることも明かした。

 首脳陣の脳裏には、まだオープン戦で投じた危険球の残像が残っている。斎藤コーチが“昇格条件”に挙げたのも、制球力の向上だった。「もう少し細かいコントロールは必要。(一軍に)上がってすぐに(降格)、というのでは困るわけだから。そこの状態が上がってこないことには厳しいでしょう」とした。

 澤村本人からも、“全快宣言”は聞かれない。現状については「これだけリハビリが長くて、投げることを休んでいたので、試合数をこなさないと戻ってこない部分はある」と語った。また、課題である制球以前に「正直、投げながらも肩に症状が出ることもありますし、技術的にもコンディション的にももうちょっとかなと思います」といまだ肩に不安を抱えていることも吐露した。

 本来の実力を発揮できれば、澤村は二軍にいるような選手ではない。だが首脳陣としては、戦力になるかどうか以前に、オープン戦の悪夢を繰り返させたくはない親心もある。はやる気持ちを抑えながら、一軍は背番号15の帰還を待っている。