【高校野球】埼玉初V・花咲徳栄 圧勝劇の裏に「恐怖の寮生活」

2017年08月24日 16時30分

花咲特栄が歓喜の初V

 第99回全国高校野球選手権大会の決勝(23日)は花咲徳栄(埼玉)が広陵(広島)を14―4で下し、埼玉県勢初となる夏の甲子園優勝を成し遂げた。圧勝劇で頂点にたどり着いた花咲徳栄だが、その強さは厳しい環境で養われた精神力にあった。ナインが鍛えられたその類いまれな?環境とは…。

 すべての試合で2桁安打。この日も16安打と最後まで猛攻は止まらなかった。また全試合で9得点以上の優勝は1921年の和歌山中以来96年ぶりだ。初回に西川(3年)の適時打でいきなり2点を先制。5回には打者10人の猛攻で一挙6点、6回にも4点を奪い、最後まで主導権を渡さなかった。投げては2枚看板の綱脇(3年)、清水(3年)の継投が決まり、強打の広陵打線を4点に抑えた。岩井監督は「本当につらい道を一つひとつ、一歩一歩よく駆け上がってくれたと思う。選手が私を信じて、日々つらい練習を成し遂げてくれた結果です」と目頭を熱くさせた。

 ナインの一人は「本当に厳しい環境でした…」としみじみ話す。猛練習はもちろん、この言葉には別の意味も含まれている。部員の半数以上が生活している野球部の寮が老朽化していることで“問題”が多く、ある選手は「建設されて30年以上は経過している古い寮なので壁とかに穴が開いているところがあって。そこから虫や動物が入り込んでくるのは日常茶飯事です。ベッドの下に野良猫がまるで我が家のように潜り込んできたり、ハチやクモ、ネズミも…。ゴキブリが出たぐらいでは全然ビビらないです」と明かす。7月にはこの日、3安打4打点の活躍を見せたプロ注目の西川(3年)のユニホームがなくなる盗難騒ぎがあり、敷地内に何者かが侵入した可能性もあるため警察に被害届を出した。

 この寮には岩井監督が「恩師」と仰ぐ故稲垣前監督とナインの汗と涙の思い出が詰まっているが、ナインも「こういう環境に耐えて花咲徳栄の一員としてやってきた。僕らにとって甲子園での苦しみは何てことないです」と様々な“外敵”に負けない精神が培われたというわけだ。

 しかしながら「いつか寮を新しくしてほしい」という切実な思いも…。そしてこのタイミングで“朗報”が届いた。現在、寮と同じ敷地内に廃校となった短大をリフォームして新寮にする工事が進んでおり、年内にも完成予定。同校の教員は「岩井監督はこの寮を使い続けることを望んでいましたが、衛生面に問題があるので了承してもらいました」という。全国Vを達成して新寮がプレゼントされる形になったが、新寮へ移る後輩たちには“旧寮伝説”が語り継がれていくに違いない。