【赤坂英一「赤ペン!」】いくら何でも本塁打が多過ぎる。“飛ぶボール”が使われてるんじゃないだろうな――。大詰めを迎えている甲子園、ネット裏の参加校やマスコミ関係者の間ではそんな声で持ちきりである。

 なにしろ、通算本塁打数が準々決勝で64本に達し、過去最多の2006年第88回大会の60本を更新。大会関係者からは「バレンティン(ヤクルト=プロ野球記録60本塁打保持者)超え達成だな。決勝までに70本を超えればいい」というジョークも飛び出した。

 本塁打の急増、原因はいったい何なのか。聖光学院・斎藤監督は「最近の子供のパワーアップでしょう。コレに尽きるのでは」と指摘。明徳義塾・馬淵監督は「今年は強力な投手がいない。150キロクラスの投手がもっといれば違った結果が出たかも」と“打高投低”の傾向に原因を求めた。

 一方、花咲徳栄・岩井監督は「甲子園では打球がよく飛ぶ印象がある。去年から県大会よりも甲子園のほうが飛ぶように感じます」と証言。原因については「打てる高校は食べるものが違うのかな」と見当もつかないと言わんばかりだったが。

 私が気になったのは、本塁打を打ったのが中軸打者ばかりではなく、6~8番打者の一発も多かったことだ。とくに神戸国際大付の6番・谷口(2年)が2回戦で放った大会史上32人目(34度目)の2打席連続本塁打には、相手の北海バッテリーはもちろん甲子園の観衆も報道陣も驚いた。

 左中間への同点ソロはまだしも、逆転3ランとなった2本目は反対方向の右翼ポール際へ運んだ一発。この谷口が県大会では0本塁打だったことから、“飛ぶボール疑惑”が関係者の間でささやかれるようになったのだ。

 主催者の朝日新聞関係者で、大会委員の一人に疑問をぶつけてみた。

「使用しているボールは毎年同じです。反発係数なら大理石に落とす検査できちんとチェックしています。ボール自体には何も問題はありません。大会前半は本塁からセンター方向への風が強い日が多かったから、追い風に乗った本塁打が増えたんじゃないでしょうか」 甲子園に“ホームラン風”が吹いていたということか。なお、60本塁打を記録した06年88回大会以降は、低反発球に変更する措置が取られたが「今回はそういう話は一切出ていない」そうである。