第99回全国高校野球選手権大会第12日(20日、甲子園)、広陵(広島)が仙台育英(宮城)を10―4で下し、10年ぶりの4強入りを果たした。

 注目の主砲・中村奨成捕手(3年)が打席に立つたびに、スタンドから大歓声が湧き起こる。前日(19日)の聖光学院(福島)戦で放った3試合連続の決勝2ランは今大会4本目のアーチ。PL学園・清原和博(元巨人など)の持つ大会本塁打記録の5本に王手をかけて臨んだ試合だっただけに、注目を一身に浴びた。

 それでも冷静沈着だった。「観客の皆さんの期待を感じたが、大きいのを狙ったら簡単に打ち取られる。だからつないでいった」と振り返った通り「フォア・ザ・チーム」の打撃に徹した。初回に二塁打を放って先制のお膳立てをするなど、5打数2安打1盗塁と活躍。得点に絡み、仕事をキッチリこなした中村は「チームバッティングができてよかった」と胸を張った。

 リード面でも投手陣を引っ張った。6回途中で降板した先発右腕・山本が9回に再び4番手としてマウンドに立つと2点を返されたが、全く慌てなかった。「簡単に終わるような相手じゃない。あのぐらい追い上げられるのは頭に入っていた」

 77人が犠牲となった広島市の土砂災害は発生からこの日で丸3年を迎えた。学校所在地の安佐南区でも甚大な被害が出たことから、準々決勝に臨む当日の朝食ミーティングでは中井監督が「命があって野球をやる幸せがある。今日はしっかりやろう」と訓示した。中村も「土砂災害に遭われた方々に希望を与える活躍をしたい」。自らのプレーでチームを夏の大会初Vへと導き、深紅の大優勝旗を故郷に持ち帰ることを改めて誓った。