阪神が15日の広島戦(京セラドーム大阪)に6―11で敗れ、一度は消した首位・赤ヘルの優勝マジックを27で再点灯させてしまった。金本知憲監督(49)は「付いたり消えたりするものだから」と話すにとどめたが、悔しい負けだ。そんな虎に本紙評論家の伊勢孝夫氏は今後の戦い方を伝授。併せて広島の強さについても言及した。

【伊勢孝夫 新IDアナライザー】阪神にとって大事な首位・広島との3連戦初戦だったが、残念なことに序盤で勝負は決まった。先発・小野が打ち込まれてKOされたが、気になったのはリードする捕手・梅野の配球だ。初回いきなり田中、菊池に連打を浴び、無死一、三塁の窮地。ここで続く丸にはカウント2ボール。打者が明らかに直球を狙ってくるところで、正直に直球を要求して3ランを浴びた。確かに小野の状態は悪く変化球でストライクが取れなかった。しかし、それを含めてやりくりするのが捕手の仕事。もっと工夫が必要だった。今後の戦いのために、梅野は対広島用の配球を徹底的に研究しなければならない。

 広島とは9・5ゲーム差となったが、まだ頂点を目指す姿勢を変えなくてもいい。ただ、首脳陣はクライマックス・シリーズ(CS)を見据えた戦いも念頭に置くべきだ。福留、そして近々復帰する糸井のベテラン2人については10月に照準を合わせるような起用法を勧める。体調が万全なら必ず力は発揮してくれるだけに、疲労を残さないよう週2日の休養を与えるなど工夫が必要。特に病み上がりの糸井に今から無理は禁物だ。

 一方、伸び悩んでいる高山、北條ら若手にはCSまでに戦力になってもらうためにも猛練習を課すべき。最低でも一日1000スイングは振らせる。阪神ナインも早出特打などで汗を流しているが、広島に追いつこうとするなら倍は振り込まないといけない。戦力差を埋めるためには若手の成長しかない。

 それにしても、改めて広島ナインの選球眼の良さには驚かされた。どの打者もボール球には徹底して手を出さない。石井打撃コーチに聞けば、キャンプ中の打撃練習では中堅から逆方向にしか打ってはいけない期間を設けているという。これによってボールを長く見るクセがつき、選球眼が磨かれているのだろう。この練習法は、阪神も若手に取り入れればいいと思う。

(本紙評論家)