前田幸長氏「慎之助は若いころから非凡なオーラがあった」

2017年08月14日 16時31分

偉業を達成した阿部は笑顔

 巨人の阿部慎之助内野手(38)が13日の広島戦(マツダ)で、9回一死で迎えた第4打席、相手守護神・今村から右前打を放ち、史上49人目、チーム生え抜きでは川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、柴田勲に次ぐ5人目のプロ野球通算2000安打を達成した。

【前田幸長・直球勝負】慎之助、おめでとう! 選ばれた人間にしか2000本も打つことはできない。まずは素直にこの偉業をたたえたい。長い間“巨人の顔”であり続けての記録だけに、より重みがある。

 思い返せば私が巨人に移籍した2002年は、ルーキーから正捕手の座をつかんだ慎之助の2年目の年だった。最近、当時のキャンプ集合写真を目にする機会があった。松井秀喜、高橋由伸、上原浩治…そうそうたるメンバーに囲まれた慎之助の姿は小さく見えた。それが今は、堂々とチームの先頭に立っている。ここまでの選手になるまでには、とてつもない努力を重ねてきただろうと思う。

 ただ、若いころから慎之助には非凡なオーラがあった。ルーキー時代、私が中日投手として対戦したときも、新人ながら恐ろしさを感じる選手だった。巨人でチームメートとなってからは、よりすごみを感じた。

 投手というのは相手打者には誰でも恐怖を覚えるが、味方の打者に対しては「打ってくれるのかな」と猜疑(さいぎ)心のほうが勝ってしまうもの。それが慎之助は、若いころから「今日も打ってくれそうだな」と感じる数少ない選手だった。私がこの雰囲気を感じたのは、他に松井と由伸ぐらいだ。

 ひとつ彼にとっての心残りは、捕手として記録達成の瞬間を迎えられなかったことだろう。首を痛め、一塁手への転向を決断してからも「捕手としてもう一回勝負したい思いはある。でも体はボロボロ。現実的に厳しいかなとは感じています」というようなことを話していた。だからこそ、打撃に苦しむ小林の姿には歯がゆさを感じているのではないか。

 ただ捕手でなくなっても、選手としては思う存分やってほしい。いずれ指導者としてトップに立てる人間だ。2000本で止まってしまう選手ではない。投手から見て、これほど怖い打者は今も巨人にいない。慎之助よ、まだまだだ。(本紙評論家)