弟分・朝井秀樹氏が明かす巨人・阿部「2000安打」壮絶秘話

2017年08月15日 11時00分

2000安打を達成した阿部

 巨人の阿部慎之助内野手(38)が13日の広島戦(マツダ)で、9回一死で迎えた第4打席、相手守護神・今村から右前打を放ち、史上49人目、チーム生え抜きでは川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、柴田勲に次ぐ5人目のプロ野球通算2000安打を達成した。この大記録達成を陰からそっと見つめていた男がいる。昨年から打撃投手として現場復帰した朝井秀樹氏(33)だ。巨人での現役時代から阿部にかわいがられ、今年のグアムでの自主トレにも打撃投手として同行した“弟分”が、本紙に2000安打秘話を披露してくれた。

 偉業達成を目の当たりにした朝井氏によぎったのは昨年、阿部が右肩を痛めて開幕を二軍で過ごしていた時の姿だった。由伸監督就任を機に、コンバートした一塁手から覚悟を持って捕手に再転向した直後の負傷。苦しむ背番号10と練習をともにしていた。

「まさに一進一退、一喜一憂の状態でした。二軍では自分とキャッチボールさせてもらっていたのですが、投げたとたんに『キツイな…』と。『おっ、今日はいけるぞ!』という日もあるんですが、翌日投げてみるとまた『キツイな…』。そんな日々だったんです。打撃でも低めのボールを拾おうとして、最後右手一本になってしまうことにすごい敏感になっていた。バットをワンハンドで振り切ることで右肩に負担がかかってしまうので。阿部さんが『2000本は通過点』と言っているのをよく耳にしていましたが、そんな姿を知っているだけに本当に良かったと思う」

 打撃同様、豪快な親分肌に見えるが、裏方への気配りは実にこまやかだ。小林と行った今年のグアム自主トレのサポートを依頼されたのが、昨年の8月24日だった。「『相談がある。電話できるか?』と。もちろん即答しましたが、自分なんかに務まるのかなと思って、改めて聞いてみたんです。そうしたら『大丈夫だから、手伝ってほしい』と」

 自主トレでも初日から驚かされた。グアム到着は深夜だったが、その朝からいきなりフリー打撃を敢行。自らの肉体を追い込みながらも“弟子入り”した小林には、自身がノートに書きためた捕手論をベースに毎日、野球談議、捕手談議を繰り広げた。

「夕食後だけでなく、練習の合間もずっとアドバイスを送っていました。誠司(小林)も、阿部さんの声が聞こえる距離にいるときはずっとノートとペンを持っていましたね。僕もその話を聞かせていただいたことがありますが、僕もメモを取ろうかなとマジで思ったくらいの内容でした。例えば試合中のことだと、投手への返球の仕方とか、どういう姿でベンチへ帰ってくるのがいいのかとか、絶好調の打者の抑え方という踏み込んだ内容もありました」

 バットマンとしても妥協はない。打撃投手に投球に関する要求をすることなく、打撃練習では逆方向のレフトから徐々にセンター、ライトへと打っていくのがルーティンの一つ。これだけの実績を残しても試行錯誤の繰り返しで「足の上げ方、テークバックの取り方、重心の移し方一つにしても、とにかく入念に取り組んでいました」。

 自らの経験を余すところなく後輩に伝授した阿部だったが、常日頃、朝井氏が心底感じることがあるという。「阿部さんと話していると『ああ、やっぱり根っからのキャッチャーなんだな』と感じることが今でも多々あります。野村克也さんの言葉をお借りするなら“生涯一捕手”。その思いは、ずっと持っているんじゃないかと思います」