今季が3年契約の3年目となるソフトバンクの松坂大輔投手(36)が、まさかの契約延長となる可能性が出てきた。推定年俸4億円と大きな期待をされながら、ここまで一軍登板は1試合のみで、現在も右肩痛からの復帰のメドは立っていない。今季中の一軍マウンドは厳しい状況にもかかわらず…。球団側は松坂の意思を尊重する方針で、本人が望めばラストチャンスを与えるという。

 幾多の伝説を作り上げた平成の怪物が崖っ縁に立たされている。2015年に日本球界に復帰して3年目になるが、右肩痛に悩まされてリハビリ生活に明け暮れている。

 今季はオープン戦で結果を残して、先発ローテーションのバックアップとして控えることになった。しかし、再び肩の違和感に襲われた。4月に故障者が出たことで巡ってきた一軍先発の機会を無念の回避。現在はキャッチボールこそ行っているが状態はなかなか上がらず、ブルペン投球を再開するメドも立っていない。

 最後に実戦で投げたのは3月25日のオープン戦・広島戦(ヤフオクドーム)。7回をノーヒットに抑えて復活への光が見えたかに思われたマウンドだった。しかし、そこから早くも4か月余りが経過した。現状を考えれば、残り試合で一軍マウンドに立つことは簡単ではない。

 加えて一軍登板は昨季の最終戦の1試合しかない。それも1イニングで3安打4四死球5失点と散々なものだった。今季はベースである推定3年12億円の大型契約の最終年でもある。36歳の年齢を考えれば後がない状況で、引退という形でユニホームを脱いでもおかしくはない。

 だが、球団側としては松坂の意思次第で来季も契約する方向性のようだ。球団フロントの一人は「本人が辞めたいと言うなら別だが、あの松坂大輔がもう1年勝負したいという思いがあるなら、獲得してきた球団であるうちが『もういいだろう』とはならないでしょう。これまでも大物選手の引き際に関しては本人に任せてきているところもありますしね」と話した。

 近年のソフトバンクでは、功労者の進退に関しては本人の意思を最大限に尊重する方針を貫いてきた。かつての大エース・斉藤和巳氏にしても、リハビリ担当コーチ兼任時代を含めて、6シーズンにわたり一軍登板なしで復活を目指してきた。

 また、昨年3月に引退を表明した松中信彦氏にしてもそうだった。世代交代を進めるチーム事情で構想外とあり、自らが退団しての現役続行を選択したものの、球団側は引退の花道を用意するとともに、本人の意思次第では来季の契約も容認していた。

 もちろん、松坂の場合、チームの功労者ではなく、状況は大きく異なる。ただ、WBCで日本代表を2大会連続で頂点に導くなど、世界を舞台に戦った球界の功労者であることは間違いない。しかも、今季はプエルトリコのウインターリーグ参戦に始まり、オープン戦でも好投を見せた。王球団会長が「選手はこういう変化もできるんだということを見ていただきたい」と話すなど、肩の問題は大きいが復活の“兆し”はあった。

「言い方はおかしいけど、うちの場合あと1年増えることで年俸面でどうこうという球団ではない。それに何試合も投げてだめだったというならまだしも、1試合しか投げていないということもある。ここまで来たら何とか雄姿を見たいという思いがあるのも確か」(球団関係者)

 ラストチャンスに臨むとなれば、現在の年俸4億円からの大幅ダウンも避けられない。とはいえ、少なくとも復活への道は残されている。右肩の状態に進展がない大苦境の中、松坂はどのような決断を下すのか。

【ソフトバンク入団後の歩み】

 2015年3月4日 阪神とのオープン戦(甲子園)に先発し、3回無失点。最速146キロ。

 同18日 インフルエンザB型を発症。開幕ローテ入りが白紙に。

 5月24日 ウエスタン・リーグ広島戦(中津)に中3日で登板する予定を試合開始直前に回避。

 8月18日 関東の病院で右肩の内視鏡手術。

 11月中旬 米国でキャッチボールを再開。

 2016年3月3日 韓国・斗山との練習試合に先発し2回を完全。

 5月14日 ウエスタン・広島戦(マツダ)で1回1/3を9失点。右手違和感、腰の張りを訴える。

 8月28日 四国IL・香川との三軍戦先発。日本復帰後最速147キロ。

 9月10日 ウエスタン・オリックス戦(筑後)に先発も右臀部の張りで3回で降板。

 同22日 三軍のホンダ熊本戦(筑後)で2回完全、最速145キロ。

 10月2日 シーズン最終戦となった楽天戦(宮城)で日本球界復帰後初登板も、1回3安打4四死球で5失点と大炎上。

 11月30日 プエルトリコのウインターリーグに参戦。4試合登板し、0勝3敗、防御率2・70。

 2017年1月28日 筑後で自主トレ公開。激ヤセぶりが話題に。

 3月18日 西武とのオープン戦(メットライフ)に先発も、4回途中に右足内転筋を痛め降板。

 同25日 広島とのオープン戦(ヤフオク)に先発し、7回無安打無失点、6奪三振。開幕は先発豊富なチーム事情のため二軍スタート。

 4月12日 右肩に違和感。15日のオリックス戦(ヤフオク)での今季初登板が消滅。