【上原浩治「中継ぎピッチャーズバイブル」】カブスの上原浩治投手(42)が山あり谷ありだった前半戦を終えた。8球で三者凡退に片付けたこともあれば、無死満塁での登板や連打を浴びてイニングの途中で降板したこともあった。このように読めない起用に応えるのは容易なことではないが、ここまで33試合に登板して、2勝4敗2セーブ12ホールド、防御率2・73(現地時間12日現在)と結果を出している。どう対応しているのか。

「特別深く考えない方がいいってこと。やるのは人間ですから」

 メジャー9年目、上原はオールスター戦休みを前にこう話した。初めて所属するナ・リーグ球団での対応について開幕直後には「1か月くらいは様子を見ないと」と話していたが、3か月過ぎた今、「深く考えない」ことで落ち着いたようだ。

 初めて、あるいは対戦経験の少ない打者との対戦や、デーゲーム4連戦、本拠地ではメジャー移籍後初となる室内ブルペンでの待機などを余儀なくされているが、昨季までと同様、試合が終われば、次の試合、次の登板に向けて切り替える。

 上原はオリオールズ、レッドソックス時代は8回を任されるセットアッパー、9回を締めるクローザーなど、大まかながらも登板するイニングが見えていたが、カブスでは「何回というよりも、6回以降に準備をしている。言われたところで、勝ちゲームだろうか、負けゲームだろうが、あると思って準備をしている」。開幕から明確なパターンがない。

 新鮮という見方もあるが、出番から逆算した準備がしにくいことを考えると、相当タフな役割だ。カブスのブルペン陣で役割がハッキリしているのは、抑えのウェード・デービスだけ。上原は「6回、7回、8回のどこか」での出番をイメージして待つのだが、実際には6回がなければ7回、7回がなければ8回、8回や9回がなければ延長に備える、といった具合だ。

 マドン監督が「コージだけではない。ストロッピー(ペドロ・ストロップ)も、(エクトル)ロンドンも、去年とは違う仕事を全うしてくれている」と評価するように、8回までの終盤に誰がマウンドに上がるのか分からない。もっとも、そのことは相手チームも読めないということになるが。

 それでも上原が毎試合、しっかり準備ができるのは、リリーバーとしてのルーティンを確立させているからにほかならない。トレーニング、コンディショニング、食事、睡眠などだが、その中でも上原が重視しているのが疲労回復。

 上原は「回復させるのに大事なのは休むこと。一番は睡眠。食事も大事やし、あとはオンとオフの切り替えでしょ。いい時も悪い時も、その日はその日で終わり」と話す。そのためにも「まずはリラックス時間を作ること」が大切だという。また、シーズン中は「投げた後とかは何もしないし、投げる前に治療したり、まあ、その日その日で違いますけどね」と話す。準備や手入れに費やす時間をどうマネジメントするかも重要だ。では、試合後に欠かさないアイシングについてはどう考えているのか。

「毛細血管が切れて、炎症しているわけですから、そこを冷やして、もう一回温かい(風呂など)のに漬かれば、一気に血液が流れるという考え」で、試合後はヒジや腰などを冷やす。上原はこう続ける。

「アイシングをしなくても、という人もいるでしょうし、やり方はいろいろ。その人の感覚ですよね。まあ、アイシングは予防ですね。ボストン(レッドソックス)の時もそうでしたけど、任せられているところがあるので、そういう状況だからこそ、キチンとやるべきことはやる、それが大事」

 3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で再会した巨人の村田善則バッテリーコーチ(43)は上原について、「ケガから学んだことも多いはず」と話すが、上原はそこをプラスには捉えていない。

「ケガしないのが一流ですよ。だから僕は一流にはなりきれなかったということ。イチローさんとか、松井さんとかね。ああいう人たちが一流ですよ。田中マサも、ああ言われながらも投げているし、一流ですよ。僕の場合は(シーズンによっては)1か月半とか2か月休んだりしているわけですから、そういうのは一流ではない」

 6月下旬のマイアミ遠征中には、マーリンズのイチロー外野手(43)とフィールドで話す機会を得た。後日、上原は自身のツイッターで「いろいろヒントを頂きました」と報告した。確立したルーティンを地道に繰り返している2人がどんな言葉を交わしたのかは大変興味深い。

 上原は、少しだけヒントをくれた。

「(ヒントになったのは)会話の中の、イチローさんの言葉です。1年を通してというのではなく、その時、その時の考えっていうのを聞いただけなんですけど、野手と投手とか、それは関係なくて、ひとりの選手として、ですね」