第99回全国高校野球選手権大会千葉大会の開会式前日に、とんでもない不祥事が発覚した。春夏通算9回の甲子園出場を誇り、多くのプロ野球選手を輩出している拓大紅陵の元野球部員3人が10日、知人の少女に売春させたとして警視庁に逮捕されたというのだ。3人はすでに退学しているが、事件当時は野球部に所属。この事件を学校サイドは高野連に報告していなかった。出場辞退にも発展しかねない事態とあって、波紋が広がっている。

 3年生の最後の夏は、目の前で消滅してしまうのか。警視庁少年育成課は、売春防止法違反(周旋)の疑いで、拓大紅陵の元野球部員である17~18歳の少年3人を逮捕した。一部の少年は容疑を否認しているという。

 捜査関係者によると、逮捕容疑は今年1~2月、30代の男性客に知人の少女を引き合わせて、売春をあっせんした疑い。3人は当時、高校2年の同級生で野球部員だったが、現在は退学している。ツイッターを使って男性客3人を集めていた。

 だが「今は退学しているから問題ない」とはならないのが、連帯責任の高校野球。事件を起こした当時、部に所属していたのならなおさらで、事件のあらましを高野連に報告し、処分を待つのがルールとなっている。

 しかし、一部報道によると、県高野連はこの件についての報告を受けていないという。今後の流れとしては日本高野連が審議委員会を開き、拓大紅陵の処分を検討。その後に日本学生野球協会審査室へ上申し、そこでの審議を経て正式な処分が決まることになる。通例から「報告遅れ」も上申案件には含まれることから「対外試合禁止」という重い処分になることも十分に考えられる。

 ただ、部員が逮捕されたケースではこんな例もある。2009年、野球部員が強制わいせつ容疑で逮捕されたある高校について、日本高野連は対外試合禁止処分には該当しないと判断した。同じ時期に部員の万引き、部内暴力、いじめ、喫煙で対外試合禁止処分になっている高校があるにもかかわらず、だ。

 また、12年には夏の甲子園大会に出場した高校の、登録メンバーではない野球部員が、大会期間中に強盗で逮捕されたが、個人的な非行と大会に出場しているチームの活動との関係がないことが考慮され、厳重注意処分で済んでいる。もちろん処分を待たず、学校側の判断で出場辞退というケースもあるだけに…。最後の夏を前にした3年生たちにとっては気が気でないだろう。

 拓大紅陵といえば、かつて「東の横綱」と言われ、1992年の夏の甲子園では準優勝。監督は現U―18高校日本代表監督の小枝守氏で知られるが、小枝氏が14年夏を最後に退任する前後から内部抗争の噂が噴出するなどのゴタゴタがあり、14年から同校のコーチを務めた元横浜(現DeNA)の田中一徳氏も2年足らずで退任。県内でもシードが取れない状況などから、県高校野球関係者の間で心配されていた。

 ちなみに拓大紅陵の今夏の1回戦の対戦相手は、12日の秀明八千代。同ブロックにはBシードの習志野がいる。現主将は元ヤクルト内野手の度会博文(現ヤクルト広報)の長男・基輝(3年)が務めている。

 拓大紅陵は11日朝、本紙の取材に記者会見を行う予定がないとしたうえで、この日の開会式には参加することを明かした。