将来のエース候補が本格覚醒だ。広島の大瀬良大地投手(26)が25日の阪神戦(マツダスタジアム)で7回8安打ながら無失点に抑え、無傷の5勝目をマークした。1年目の2014年こそ10勝を挙げて新人王に輝いたが、ここ2年は先発として結果を残せずに苦しんだ。精神面の弱さを指摘されることもあった4年目右腕は、いかにしてタフになったのか――。

 毎回のようにピンチを迎えながらもスコアボードに「0」を並べた。4―0の7回には二死一塁から梅野に左前打を浴びたが、高山の一、二塁間へのゴロをエルドレッドが好捕。大瀬良は素早くベースカバーに入って無失点で切り抜けた。

 7回を投げて8安打され、一人の走者も許さなかったのは6回のみ。21アウトのうちフライアウトが10。大瀬良は「逆球があったけど、ポップフライも多くてボールの強さはそこそこあったのかな。打者の反応を見てそう感じた」と手応えを口にした。緒方監督も「走者を置いても粘って投げ切ってくれたのは収穫。ギアを上げたときには、いい球が行っていた」と目を細めた。

 新人王に輝いた14年は先発として一年間投げ抜いて26試合で10勝8敗。しかし、15年は先発で結果を残せず中継ぎに配置転換。16年も右ヒジのケガから出遅れ、先発は1試合のみ。25年ぶりのリーグ制覇には貢献したが、不本意なシーズンになった。

 再び先発として再起を誓った今季は、ここまで無傷の5連勝。15年にCS進出のかかった10月7日の中日戦にリリーフで登板して炎上し、ベンチで大泣きしたような精神面の不安も見られない。

 そんな右腕が取り入れているのは“涙活リフレッシュ”だ。「最近、遠征先や自宅で時間があるときは映画を見ている」。特に好きなのは人間ドラマだそうで「ハドソン川の奇跡」「42~世界を変えた男~」などノンフィクション作品を中心に観賞する。「感動して涙を流すこともあるけど、感受性を豊かにするのもいいかなと。それにリラックスできる」。逆にマウンドでは平常心でいられるように努めている。

 最近では交流戦が終わってから、捕手の石原に「いつまでも、いい子ぶってるんじゃない」と言われてヒゲを伸ばし始めた。チーム内では賛否両論あるが「『似合ってない』と言われることもあるけど、意外と“賛”も多い」。賛成派の左腕ジョンソンには「もっと伸ばせ」と言われている。この日は試合前に「石原さんにバレないように」と口上のヒゲだけ剃ってマウンドに上がって白星をマーク。こんなところでも殻を破っている。

 チームは2位阪神に5ゲーム差をつけて今季最多の貯金18。“負けない男”が赤ヘルをリーグ連覇に導く。