ソフトバンクが18日の広島戦(マツダ)に7―4で勝ち、交流戦12勝6敗で史上初の3年連続7度目の最高勝率チームに決まった。広島と勝率で並んだが、直接対決で2勝1敗と勝ち越したため。工藤監督が自ら提案した大胆なオーダー変更が見事に的中し、投手陣も7人をつぎ込んでの必勝リレーで逃げ切った。それにしてもこのチームは、巨大補強もしながら若い選手もきっちり出てくる。どうしてなのか。

「4番は松田で行く」。これまで打撃コーチの推薦に一貫して従ってきた工藤監督が、大一番で動いた。「マッチ(松田)が意識して、ホームランか三振かという感じで振ってくれればと思ってね」。そう意図を語った指揮官の期待に、松田が見事に応えた。

 初回の先制打に、5回は中押しの左前適時打。「4番は球場に来てから知った。(チャンスで)打てて良かった」という松田に、工藤監督は「思いっきり振ってくれたのでタイムリーになったと思う」と目尻を下げた。

 また、この日は1番に福田、7番に高田を抜てき。これも指揮官の独断だった。福田は2回に2点適時打。高田も8回にダメ押しの適時三塁打を放ち、勝利に貢献した。これには藤本打撃コーチも「監督のひらめきがピタリとハマった試合だったね」と脱帽だ。

 工藤監督は試合後「選手一人ひとりが力を発揮してくれた。スコアラーやコーチも相手選手を分析してくれた。内川、デスパイネの分まで、という気持ちがあったと思う。いつも以上の力が出せたんじゃないかなと思う」と、投打に主力の故障者が続出する中、一丸となっての“V3”の偉業を喜んだ。

 対セ・リーグに圧倒的な強さを誇り、これで13年で7度目の交流戦V。ただ、今季に関しては“若手育成の交流戦”でもあった。

 先発の両輪である武田と和田が不在。ローテーションにはプロ未勝利だった石川、松本裕が入った。当初より「勝つに越したことはないし、負ければ悔しいが、目指しているのは交流戦1位ではない。チャンスが回ってくる若手から、1人でも使えるめどが立てばいい」(球団フロント)との声もあった。さらには期間中に内川、千賀、デスパイネ、高谷が離脱した。

 とはいえ、かつて後藤球団社長は常勝軍団を作るための“基本方針”についてこうも明かしていた。「ケガ人が多く出たからというのは言い訳にはならない。それも見越した上でチーム編成をしないといけない。それぞれが1歳ずつ年を重ねていき体も変化していく。想定より早く準備する必要がある。次の世代の戦力を見据えて補強や育成を進めないといけない」。

 その通りに“有事”に選手層の厚さを見せつけた。チャンスをもらった選手が起用に応え、終盤は日替わりオーダーで打線を組みながら交流戦王者に輝いた。補強のイメージも強いが、最終戦に出場した野手は全員が生え抜きで松田以外は20代。投手陣にも3人にプロ初勝利がついた。

 球団幹部も「これだけけが人が出て工藤監督は苦心したと思うが、バックアップの選手がこれだけやれることを証明できたのは大きい。リーグ戦の再開後には故障者が徐々に戻って来るが、結果を残せた若手には自信になったはずだし、戦力として計算もできる」。

 巨大補強をしつつ若手を育てながら、しかも勝つ。ソフトバンクの強さの秘密を、セの盟主球団は見習ったほうがいいかもしれない。