巨人は12日の広島戦(マツダ)が雨天のため試合前に中止が決まった。チームにはドラフト1位ルーキーの吉川尚輝内野手(22)が9日の阪神戦から合流。いまだ“デビュー戦”のチャンスには恵まれていないが、現段階で首脳陣はホープをどう見ているのか。“緊急診断”してもらった。

 吉川尚は1月の新人合同自主トレを上半身のコンディション不良のため離脱。2月のキャンプは三軍で過ごしたが、状態が上向いた3月上旬から二軍に昇格した。そして内海の出場選手登録抹消により、初めて一軍への切符が転がり込んだ。開幕にこそ出遅れたものの、チームの新人ではドラフト3位の谷岡、同4位・池田に続く3人目の一軍昇格となった。

 ただ、一軍での出場機会は今のところゼロ。首脳陣は「まずは一軍の空気に慣れてもらうところから」とスタメン起用には慎重な姿勢だが、二塁と遊撃をこなすホープをどう評価しているのか。連日、試合前の練習で吉川尚にノックの雨を降らせている井端内野守備走塁コーチは「まだ数日しか見ていないから…」と前置きした上で「光るところは横に行った打球へのスピード感は目を見張るものがある」。その一方で「正面で捕れるものをポロッとするところがある。確実なものをアウトにしないといけない」と課題を指摘することも忘れなかった。

 では、50メートル5秒7とされる自慢の足はどうか。井端コーチは「重信クラスになれる。スピードの差は大してない」と太鼓判。現有戦力で重信はチームの“代走の切り札”の役割を果たしているが、吉川尚の俊足も引けを取らないという。

 打撃面はどうか。昇格前のイースタン・リーグでは30試合に出場し、打率1割8分7厘、0本塁打、5打点。どうにもパッとしない成績で首脳陣の中には「一軍で活躍するには非力すぎる」と厳しい声も出た。しかし、二岡打撃コーチによると「試合に出ていないので何とも言えないが、後ろ(テークバック)が大きいので逆(左)方向に打つ力はあるのではないか」と占った。

 もちろん、一軍デビューを果たしていないだけにすべてが未知数。裏を返せば、可能性は無限大とも言える。井端コーチは「うまくスピード感を守備、バッティングに生かしてもらえれば」と今後の成長に期待を寄せている。

 当の吉川尚は初めての環境に「少しは慣れた? いや、全然です」とはにかみながら「試合に出られたら、全力でアピールしたい。守備と足を期待されていると思うので、貢献できるように頑張りたい」と目を輝かせ、晴れ舞台を心待ちにしている。