【大下剛史「熱血球論」】広島は明らかに前日6日の大逆転負けを引きずっていた。どう立て直してくるのか注目していたが、何の抵抗もない。初回に一死満塁のチャンスをつかんだが、5番の新井と6番に入ったペーニャが2者連続で空振り三振。勝ちたいのかどうかも分からないような迫力のなさで、あっさりと阪神に零敗だ。

 ちょうどこのぐらいの時期は開幕からの疲労がピークを迎える。順調に4月を首位で終えて、気の緩みも出ていたのだろう。9点差をひっくり返された6日の試合では象徴的なシーンがあった。6回二死満塁で先発の岡田から中田にスイッチした場面だ。

 リリーフカーに乗ってブルペンから姿を現した中田はグラブで顔を隠しながら、どこかニヤニヤしていて、口もモゴモゴと動いていた。3連投中で出番なしと踏んでいたのか、あってももう少し後だと思って腹ごしらえをしていたのかもしれない。5回まで1失点と快調に投げていた岡田が急に崩れたことによるスクランブル発進だったのだろうが、押し出し四球に適時三塁打を許したのは当然の結果でもあった。ベンチとブルペンの意思疎通も十分にできていなかったようにも思う。

 長いシーズンには山もあれば谷もある。どんなチームでも順風満帆に1年を過ごすことはできない。広島にとっては今が谷で、考えようによっては気を引き締める機会を阪神に与えてもらったとも言える。

 経験上から、こういうときは選手を責めてはいけない。焦って選手の入れ替えなどするより、今いるメンバーで酒でも酌み交わしながら、原点回帰するための話し合いをすることの方が得策だ。

 幸いなことに9日からの神宮でのヤクルト戦に備えて、広島は8日から東京の宿舎に泊まる。それぞれが家族の元へ帰らなければいけない地元と違って選手やスタッフも集めやすく、ミーティングをするには絶好のタイミングだ。

 広島のチーム力はライバルと比べて抜けているが、かといって安心できるほどでもない。悪い流れを断ち切るためにも、今こそチーム一丸となってもらいたいものだ。(本紙専属評論家)