【プロ野球選手 妻の力(連載1)】キャンプ、遠征などで日本全国を飛び回っているプロ野球選手。その間、自宅や家族を守るのが既婚選手の妻たちだ。アスリートの妻は一般的な主婦に比べ、夫の体調管理や栄養面などに気を使うことが多いと言われる。その上、夫の成績次第では周囲からの冷たい視線や風当たりを受けることも…。何かと気苦労の多い妻たちを選手自身はどう感じ、どう見ているのか。第1回はソフトバンク・内川聖一外野手(34)に聞いた。

「嫁さんのことですか? それはもう感謝しかないですよ。シーズンは長いですし、自分が家にいることが少ない分、家のことを任せることが多いので」

 内川がこう感謝の言葉を続けたのは2010年3月に結婚した翼夫人(36)のこと。フジテレビの元女子アナウンサーであることはよく知られている。

「今も昔もそうですが、プロ野球選手が女子アナと結婚すると、周囲から『お前もか』『またか』みたいな奇異な目で見る風潮があるじゃないですか。あれは…何とも言えないですよね。僕は女子アナだからヨメと結婚したわけじゃなく、たまたま好きになった人が女子アナだっただけで。職業が魅力で結婚したわけではないですからね」

 7年前、横浜(現DeNA)時代に射止めた最愛の伴侶。決め手は「常識のある人」だったと言う。

「極端な話、結婚式の祝儀や葬式の際の香典がいくらなのかとか。だから、僕は結婚相手は常識的なことを普通に淡々と行えてかつ、周囲への気遣いができる人がいいと思っていた。それが妻だったということです」

 とはいえ、内川の抱く理想の夫婦像は妻への「依存」ではない。野球選手は結婚と同時に、自宅での生活を妻に一任する傾向が強い。だが、生涯の伴侶を得たとはいえ、食事や栄養管理などを全て任せる選手は「プロとしてどうか」と疑問を投げかける。

「もちろん、自宅で妻が栄養のある食事を作ってくれることは良いことだと思います。任せるところは任せ、野球選手としてやるべきことは妻に任せず自分でやる。例えば、ウチの場合、旅行に行く時なんかは全て旅程は妻が決める。僕はその旅程にのっかるだけ。僕があえてそこに介入しないことでバランスが取れる。でも、一方で野球に関しては全て自分の責任。妻は何も言ってこない。それはそれでまたバランスが取れるわけです。いろいろな夫婦がいると思いますけど、野球選手はそういうバランス感覚のある夫婦関係が理想なのかなと思っています」

 昨季は日本ハムに敗れ、3連覇を逃すなど悔しい思いも経験した。巻き返しを図るうえで妻のサポートは必要不可欠とも言えるが、内川に甘えはない。

「僕は今、野球選手なので、野球については何を言われても構わない。それは自分の責任なので。妻や子供は関係ない。ただ、妻は名前も顔も知られているので何かあると妻にも視線が向けられる。その際は妻のプライバシーを配慮したうえで、温かく見守っていただければ…うれしいですね」

<出会いは09年>2人の出会いは内川が侍ジャパンの一員として出場した2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を、当時フジテレビのアナウンサーだった長野翼アナが取材したことがきっかけ。その後に交際がスタートし、翌10年の1月13日に婚約発表。WBCで世界一となったちょうど1年後の3月24日に入籍し、12月18日に都内の教会で挙式した。03年にフジテレビに入社した長野アナは07年に「スーパー競馬」の司会に抜てきされ人気となり、その後は「FNNスーパーニュース」のスタジオキャスターを務めるなどした。11年3月いっぱいで退社。