日本のエースが、日本の主砲との侍対決、新・平成の名勝負第1ラウンドを制した。巨人・菅野智之投手(27)が4日のDeNA戦(横浜)で今季初先発し、7回6安打1失点と奮投。WBCでの“収穫”を糧に、DeNA・筒香嘉智外野手(25)にも真っ向勝負を挑み、無安打に封じた。右腕の気迫に打線も終盤に奮起し、チームは5―2で開幕4連勝。勢いに拍車がかかっている。

 WBCで日本中を沸かせた侍エースと侍4番の注目対決。菅野は「WBCは終わったこと。1ミリも頭にない」と語っていたが、あの激闘の熱気はファンの間にまだ残っている。両者の今季初対戦に、横浜スタジアムの観客の視線はクギ付けとなった。

 2回無死の先頭打者として迎えた筒香との最初の対戦の初球は、インハイへの速球。その後カウント2ボールから、3球目直球を低めいっぱいにコントロールし、ボテボテの二ゴロに打ち取った。そして2度目の対戦は、この日最大のヤマ場。3回二死二、三塁の場面だった。一塁は空いていたが「見ている人がワクワクするような対戦ができたらいい」と語っていた菅野に逃げの2文字はない。特筆すべきは、小林が要求した初球が、またもインハイへの149キロ直球だったことだ。さらには2、3球目も強気の内角攻め。最後はカウント2ボール2ストライクから、WBCで本格的に解禁したフォークで投ゴロに仕留めた。

 6回無死先頭の3度目の対戦こそ、フルカウントから勝負にいった球がボールの判定。四球を与えて悔しそうな表情を浮かべた菅野だったが、昨季15打数5安打2本塁打と苦しんだライバルに自分の打撃をさせなかった。

 その後は走者を背負いながらも要所を三振で切り抜け、7回6安打1失点、111球でお役御免。直後の8回に打線が4点を勝ち越し、右腕は今季初勝利を手にした。

 注目された筒香との対戦について「勝負して、見ている人がワクワクするような対戦はできたかなと思います」と笑みを浮かべた菅野。内角攻めについては「インサイドに投げるから攻めているという低いレベルの話じゃない。甘くいったら本塁打になる確率が高くなる。筒香も得意にしているけれど、そこを逆手にとって攻めの姿勢を見せた」と意図を明かした。

 筒香への「インハイ攻め」と「フォーク解禁」という決断は、メジャーの強打者が並ぶWBC準決勝・米国戦を前に、菅野と小林が立てた対策と重なる。そして実際の試合でも有効だった。チームスタッフは「フォークはしばらく使っていなかった球種だし、誠司(小林)もこれまではインサイド要求の恐怖もあったと思う。2人ともあの一戦で手応えをつかんで、それを生かそうとしているんだろう」と目を細める。

 やはり、WBCでの経験が生きているのか。菅野は「今日の時点ではどうなのかな。登板数を重ねるごとに芽生えてくるのかも」と控えめに答えたが、この日の筒香斬りで、自らの投球に対する自信をまた深めたのは間違いなさそうだ。