【緊急連載・侍ジャパン世界一に必要なもの〈中〉】東京で開催された第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンド。かつてのライバル韓国、台湾を撃破して1次ラウンドA組から勝ち上がってきたのは、新興国のオランダとイスラエルだった。両国の実力はファンだけでなく、侍たちにも十分すぎる衝撃を与えた。

 侍ジャパンが「史上最弱」ともヤユされた一方、オランダは間違いなく過去最強チームを編成して臨んできた。現役最高の遊撃手といわれるシモンズ(エンゼルス)をはじめ、ボガーツ(レッドソックス)、グリゴリアス(ヤンキース)、スクープ(オリオールズ)らメジャーの主力がズラリ。NPB60本塁打のバレンティン(ヤクルト)が主砲、14連勝男のバンデンハーク(ソフトバンク)がエースという強力な布陣だ。

 オランダ領キュラソー島出身選手が中心のチームを束ねたミューレン監督は、真面目で温厚な人柄で「彼に出場を打診されれば、断る人がいない」(アンドリュー・ジョーンズ)と尊敬を集める。同監督はジャイアンツのコーチでもあるため、MLB関係者や選手とのパイプも強固。だからバリバリのメジャーリーガーを招聘できた。準決勝では切り札としてメジャー通算189セーブのジャンセン(ドジャース)も加わり、タレント揃いのプエルトリコと延長タイブレークの激闘を演じた。

 イスラエルの勢いも、侍を戦慄させた。オランダのようにバリバリのメジャーリーガーはいないが、2次ラウンドは28人のメンバー全員がユダヤ系米国人で、多くが若いマイナーリーガー。侍の関係者が驚いたのは、彼らの開幕前とは思えない仕上がりの良さだった。

 イスラエル代表のアロン・ブルペンコーチは「我々のチームはマイナー選手が多いが、彼らはWBCで活躍してメジャー球団にアピールしたい選手も多い。そんな選手のモチベーションもチームの力になっている」と話していた。また、ウェインスタイン監督がロッキーズでスカウトを務めており、マイナーを含めたメジャー人脈が強化につながった。

 力を増した各国に共通しているのは、トップがメジャーの球団や選手と太いパイプを持っていたことだ。初優勝を飾った米国のリーランド監督は、過去4球団で指揮を執った名将。チーム編成は前回大会を率いたトーリGMが担った。準優勝のプエルトリコは、マーリンズで指揮経験があるロドリゲス監督。スーパースターを数多く揃えて優勝候補筆頭だったドミニカ共和国は、ヤンキースでコーチを務めるペーニャ監督だ。対して今回の侍首脳陣にそうした人材がいなかった。メジャーから青木(アストロズ)ただ一人の招集に終わったのは、そんな事情も影響しただろう。

 今大会の観客動員は、初めて100万人の大台を突破(108万6720人)。WBC熱は中南米・カリブ諸国を中心に、開催国・米国でも確実に高まっている。ドジャー・スタジアムで行われた米国とプエルトリコの決勝は、5万1565人の大入り。ドジャース関係者が「久しぶりに球場がこんなに盛り上がる試合を見ました」と驚いていた。

 確実に遠くなった「世界一」。侍は今後、どう巻き返しを図っていくべきか――。