第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一奪還を目指す侍ジャパンの15日の2次ラウンド・イスラエル戦(東京ドーム)で、米国スカウトたちを騒然とさせたのはこの日先発の千賀滉大投手(24=ソフトバンク)だった。

 ネット裏のメジャー球団スカウトを色めき立たせているのが、この日の先発でも無敵だった千賀だ。今大会は12日のオランダ戦までリリーフとして登板し、2試合で計4イニングを投げて7奪三振、無失点。その安定感を買われて臨んだマウンドで、千賀は初回からイスラエル打線を最速153キロ直球と落差の大きい“おばけフォーク”で打ち取っていった。ピンチらしいピンチは3回二死三塁の場面ぐらいで、ここは2番ケリーを内角152キロ直球で見逃し三振に料理。侍投手陣の“ジョーカー”は5回1安打無失点と最高の投球を披露した。

 これまでも千賀に対する米スカウトの評価は一様に高かった。特に2イニング、打者7人に対して1安打無失点4奪三振と快投した8日の1次ラウンド・オーストラリア戦を見たある球団の幹部は「あのフォークは素晴らしい」「彼がFAになるのはいつだ?」と興奮気味に話したほど。別の東海岸球団関係者は「一つ空振りが取れる球種があることが素晴らしい」とうなずきながらこう続けた。

「例えば菅野は優秀な日本のエース投手だが、全く手が出ない投手ではない。数種類の変化球もバットに当てさえすれば、メジャーレベルの打者ならこすってもスタンドインさせる力がある。その点、千賀のフォークはバットに当たらない。メジャー球(WBC公式球)も十分扱えているし、直球も95マイル(約153キロ)を超えてくる。今後調査を続けていかなきゃならない一人だ」

 強打のイスラエル打線にも全く付け入る隙を与えなかった。「とにかくイニングをゼロに抑えることを必死に心がけました。ゼロで抑えられて良かったです」。エース菅野が不安な投球を続けるなか、侍ジャパンに新たな救世主が現れた。