第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で12日、侍ジャパンが2次ラウンド初戦のオランダ戦(東京ドーム)に臨み、延長11回タイブレークの末、8―6で競り勝った。9回二死から追いつかれるなど、終盤ピンチの連続をどうにかしのぎ切り、最後は中田(日本ハム)の決勝打と、牧田(西武)の好救援に救われた格好。WBC侍ジャパンの試合としては最長となる4時間46分の死闘の裏側、ベンチワークはどうだったのか。本紙WBC取材班が小久保采配を検証した。

 延長11回までもつれた4時間46分の死闘に中田のバットが決着をつけ、日本の9番手・牧田が最後の打者・サムスを捕邪飛に打ち取った瞬間、時計の針は午後11時54分を指していた。

 本紙WBC取材班・伊藤は「最初から9回に牧田を送っていればタイブレークまではもつれなかったのでは?」とぼやきながら、小久保監督の会見を待った。1点リードの9回、クローザーに則本(楽天)を送って同点に追いつかれた小久保采配が、どうにも理解できなかったからだ。

 日付の変わったグラウンド上で勝利監督インタビューに立った小久保監督は勝利の要因について「このインタビューでは語り切れません。死闘です。勝ちたいという執念だけでした。選手が一丸となって最後まであきらめなかった。その執念だけ。本当にすごいゲームでした」。どこか感極まっているようでもあった。

 だが、取材する側としてはもちろん「則本投入」の意図について聞かねばならない。8日のオーストラリア戦後、小久保監督は「最初から(守護神は)牧田という構想でした」と明言しており、則本は7日のキューバ戦で2回2/3で3失点と炎上していた。さらに言えば2015年、プレミア12の準決勝・韓国戦で、最終回に大逆転されるきっかけとなった投手でもある。

 お立ち台でのインタビューから数十分後、場所を移した会見場で、小久保監督は問題の9回の継投について驚くべき回答をした。

「(あの場面)今日は則本で行こうと。理由はないです」

 理由はない…。その言葉を聞いた伊藤は思わず絶句。一方、後輩記者の坂庭からは「権藤投手コーチも無言で帰っちゃいました。いつもはミックスゾーンで立ち止まってくれるのに…」との報告が。権藤コーチは指揮官が「抑えは牧田」と発言した同じ8日に「まだ抑えは決めていない」と話していた。守護神問題について触れられたくないのは明らかだった。

 当事者に説明する気がないのなら、周辺を取材するしかない。この日延長10回、11回を無失点に締めて勝利の立役者となった牧田は「9回は自分が行くのかなと思っていたんですけど。オランダは一発のあるチームなんで三振の取れるピッチャーだったのかなと。自分は延長で行くんだろうなと思った」と首脳陣の意図を推測したが、少なくともこのコメントにより、ベンチの意図はブルペンに伝わっていないことが分かる。

 ということは…。

「これは今大会不調の則本に、どうにか立ち直ってもらいたいという小久保監督の温情采配だと思いますよ。もっと言えば、プレミア12のリベンジを則本にさせたいという親心なのでは」としたり顔で解説する坂庭に、伊藤は「バカ言うなよ。国際大会で温情采配なんて許されるわけないだろ。それにプレミア12のリベンジったって、それはそのまま則本起用で失敗した小久保監督自身のリベンジってことじゃねーか」と言い返したが「もし、そうだとしたら理由は言えるはずないよな…」ともつぶやいた。

 最後に去り際、再度、9回則本起用の意図を確認された小久保監督は「今日はああいう形になったら行こうと。結果的に1点は取られましたけど、勝ち越しは許さなかったので」とあくまで結果論で則本を擁護した。果たして小久保監督は、今後も“抑え”として則本を起用し続けるのだろうか。