第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一奪還を狙う侍ジャパンが8日、1次ラウンドB組のオーストラリア戦(東京ドーム)に中田翔内野手(27=日本ハム)と筒香嘉智外野手(25=DeNA)のアベック弾で4―1で快勝。2連勝で2次ラウンド進出に王手をかけた。9日に中国がオーストラリアに敗れたため1位突破が決まったが、気になるのが2次ラウンドで激突するオランダとイスラエル。なかでも不気味なのがA組で台湾、韓国を撃破した初出場のイスラエルで、果たしてダークホースへの対応はできているのか。舞台裏を探った。

 イスラエルは昨年9月、米国ブルックリンで行われた予選を突破し、本戦初出場を果たしたものの、WBC参加16か国中最下位の世界ランキング41位(日本は1位)。大会前の下馬評ではA組はオランダ、韓国の2強が2次ラウンド進出と見られていた。

 ジェリー・ウェインスタイン監督(ロッキーズスカウト)率いるイスラエルは、開幕戦の韓国戦(6日)に延長10回、2―1で勝利すると台湾戦(7日)では20安打と打線が爆発し15―7で快勝。8日、オランダが台湾に勝利したため2次ラウンド進出が決まった。

 主力選手はメジャー124勝の実績を誇る右腕ジェイソン・マーキー投手(38=元レッズ)。韓国戦では3回2安打無失点の好投でチームを引っ張った。

 WBCでは両親の1人でもその国の出身であれば、出場資格が与えられる。シャロモ・リペツ投手を除く27選手がイスラエルとの二重国籍を持つユダヤ系米国人で、ほとんどが米マイナーリーグに所属している。

 WBC本戦を前に今年1月、10選手がイスラエル第2の都市テルアビブを訪問し、米国出身選手たちが初めてイスラエルの地を踏んだ。ルーツを確認することでチームの結束はより一層、固まったという。

 今大会の台風の目となっているイスラエルについて「自分は別に驚いていません」と淡々と話すのは、侍ジャパンの007で小久保監督と青学大の同門である志田宗大スコアラー(37=ヤクルト)。

「昨年9月の予選からイスラエルには勢いがあると思って資料を集めてきました。韓国を破ったことも想定内で驚きはないです。選手のほとんどが2Aや1Aに所属している、いわば“米国第2代表”。やってくることは我々のよく知っている米国スタイルの野球だし、映像も全選手分あります」と泰然自若としていた。

 もちろんマイナー組中心だからといって侮ってはいない。「オランダはグリゴリアス内野手(ヤンキース)などメジャー選手が多いが、選手はこの時期は本来の力の4割ほど。一流選手でこの時期に10割の状態の選手はいない。むしろ自費でキャンプにテスト参加しメジャーを目指すマイナー選手の方がこの時期は動ける」(志田スコアラー)と十分に警戒した上でイスラエル対策を組み上げたという。

 小久保裕紀監督(45)も「テレビでイスラエル―韓国戦を見てかなり手ごわいかなと思っていた」と想定していた。「あとは1次ラウンドの試合映像を選手に渡すだけ」と志田スコアラーは自信満々。侍ジャパンにとってイスラエルの快進撃はサプライズではなかったようだ。