8日に行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドB組のオーストラリア戦(東京ドーム)で、1次ラウンド無安打だった中田翔内野手(27=日本ハム)のバットがようやく火を噴いた。

 1―1の同点で迎えた7回先頭の第3打席。右腕・ウィリアムズの初球スライダーをとらえ、打球を左翼席中段に叩き込んだ。値千金の決勝弾に「(先発の)菅野が本当に一生懸命投げてくれていたんで。2点目はこっちが取ってやろうとずっと思っていた」と笑みを浮かべた。

 WBC本番に入り、この打席前まで7打席無安打。だが、この不振こそが中田が爆発する予兆とも言える。というのも、中田は常に全力でプレーを続けると、必ず低迷期に陥る傾向がある。本人もその習性を自覚しているため、あえて「力を抜く」期間を作るようにしているという。

 今春の沖縄・国頭キャンプでも「シーズンもWBCもそうだと思うけど、常に全力でプレーしていたら体が持たないよ。全部の打席でホームラン打てるわけじゃないんやから。大事なところで打てばええんよ」と独自の打撃理論を淡々と語っていた。そのため、自ら力を抜いている時期や打撃フォームなどの調整中に「不振」と報じられることを極端に嫌う。今回の一撃もそんなさなかの一発だけに、本人にとっては「してやったり」という気持ちなのだろう。

 もともとコンスタントに成績を残すタイプではない長距離砲。1次ラウンド2試合で6打数1安打(3四球)とはいえ、この調子なら今後も期待が持てそうだ。