【WBC侍ジャパンドキュメント2017(3月8日)】侍エースがまずは上々のスタートを切った。菅野智之投手(27=巨人)にとって初陣となった8日のオーストラリア戦。2回にソロ1発こそ許したが、その後は走者を背負っても追加点を与えず。5回一死一塁で内野安打を許したところで球数制限を超える66球となり、2番手の岡田(中日)にマウンドを譲った。

「できれば5回を投げきりたかった」と話した菅野だったが、5回途中4安打1失点は合格点だろう。「振ってくることがわかっていたので、打たれながらも要所を締めることを目標に投げた。次に向けて良いステップが踏めたのでは」と振り返った。初戦キューバ戦の石川に続く好投で、チームは1次ラウンド突破へ大前進。小久保監督も「菅野が粘り強く1点でしのいでくれた。そこが逆転につながった」とエースの粘投に感謝した。

 一方、本紙WBC取材班の堀江は、試合中から今後の日程とにらめっこしていた。「菅野の次戦は、中6日で2次ラウンド3戦目(15日)。日本が中国に勝って1次ラウンドを全勝突破ならA組の1位との対戦。ということは、イスラエルかオランダが相手か…」

 実はこの日の試合前、チーム内からは菅野へのある“ムチャ振り”が飛び出していた。なんと、次戦は「80球で8回を投げてくれ」というのだ。

「イスラエルとオランダの打力はキューバ、オーストラリアより断然上。リリーフ陣に不安がある以上、先発の菅野がどれだけ長く投げてくれるかが鍵になる。次は5、6回といわず、7、8回。菅野なら十分いける」

 侍スタッフが熱弁するのを「さすがにむちゃでしょ」と聞き流しかけた堀江だったが、同時に菅野が以前「9回で27三振奪っても最低81球。でも、1人1球なら27球で終わるんですよ」と真顔で語っていたことを思い出した。これは右腕が共鳴するメジャー通算355勝の大投手、グレッグ・マダックス氏の持論だ。

 マダックス氏はメジャーでも球数が少ない投手として名をはせ、ブレーブス時代の1997年には、わずか76球で完投勝利の快挙を達成した。メジャーでは現在も100球以内完投の代名詞として「マダックス」という言葉が浸透しているほど。実は今大会で東京ドームのネット裏に集結するメジャースカウトの間で、菅野は「マダックス型」と評され、注目されている。

 2次ラウンドでは球数制限が80球に拡大する。次戦への意気込みを聞いた堀江に「6回は投げたいです」と返した菅野。韓国、台湾を撃破した強力打線を相手に、宣言を超える快投は見られるか。