波乱のスタートだ。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が6日に開幕。韓国・ソウルの高尺スカイドームで1次ラウンドA組が行われ、初出場のイスラエルが2―1で韓国に競り勝った。イスラエルは1―1の延長10回、韓国8番手の林昌勇を攻め、バーチャムの適時内野安打で勝ち越した。まさかの敗戦で大ピンチに陥った韓国を本紙評論家の得津高宏氏が徹底チェックした。

【得津高宏 快打一閃】イスラエルにとっては大金星。韓国には痛すぎる敗戦となった。台風の目といわれていたイスラエルは、確かに投手陣はなかなかしっかりしていた。しかし、韓国が勝てない相手ではなかった。打線で良かったのは1番のフルドと8回に代打で登場したデービスの2人ぐらいのもの。力的には韓国が勝って当然の相手だった。

 9回まで毎回走者を出し、5回から8回は先頭打者が出ながら得点はわずかに1点。普通に攻めていれば4~5点は取れていたはずだ。5回の無死一、二塁のチャンスでバント失敗。強攻策に切り替えたが、結局は見逃し三振に終わった。細かい野球が韓国は、まるでできない。きっちり送っていれば展開は全然違っただろう。

 走塁でもそう。足のある選手はいるのに、なかなか走らない。イスラエルはクイックができない投手も多い。捕手は強肩だが、走れるチャンスはいくらでもあった。崩すことはできたと思う。

 韓国プロ野球は典型的な打高投低。昨季首位打者の崔炯宇(KIA)は3割7分6厘の高打率で、打率3割3分以上はリーグで11人もいる。一方で投手は防御率2点台がわずかに1人。細かい野球ができないのは、そうした打って勝つ韓国野球の弊害かもしれない。

 イスラエルの投手が韓国打線にハマった面もある。韓国打線は真っすぐには強い。特に日本人投手のようにコントロールが良い投手が相手だとヤマを張って打っていける。しかし、イスラエルの投手は変則で、どこに行くのか分からない。完全なボールを投げたり、抜けた球がストライクゾーンになったり。そうした荒れ球のため思い切りスイングできなかった面はある。ただ、4番の李大浩に関しては打てる気がしなかった。完全な調整不足だろう。

 今の韓国打線はホームランをバンバン打つことは期待できない。日本がWBCで勝てたのはスモールベースボールができたから。韓国もそうした野球をしないと2次ラウンド進出は厳しいと言わざるを得ない。(本紙評論家)