【WBC侍ジャパンドキュメント2017(2月23日)】せっかくの男気が…。ソフトバンク・内川聖一内野手(34)が、WBC日本代表合宿初日の全体練習終了後に、志願して特守を敢行。国内組最年長選手としてチームリーダー不在の侍ジャパンをけん引していく姿勢を見せた。ところが、5000人を超えるファンがベテランの居残り練習に熱い視線と大歓声を送る中、多くの若手選手はまるで人ごとのようなそぶり。早くも暗雲が漂い始めている。

 チームリーダー不在の中、この日最も気を吐いた選手が国内組最年長だった。

 全体練習終了後の午後1時過ぎに、特守を志願。誰もいなくなったグラウンドに一人現れると5000人を超えるファンの前でおよそ30分間、泥だらけになりながら仁志内野守備・走塁コーチのノックを受け続け、存在感を見せつけた。

「毎回そうですけど、(WBC強化合宿の)最初はいろいろと探りながらどういうふうにするのかというのを、何となく(周囲が)確認し合いながらやっている。そういう雰囲気を早く取っ払っていければいいので」とは練習後の内川。

 過去3度のWBC日本代表ではイチロー(マーリンズ)を筆頭に実績のある中心選手が率先してリーダー役を買い、チームを結束させてきた。ところが、今回の日本代表は小久保監督の方針もあり主将が置かれていない。そんな事情もあり、強化合宿不参加の青木(アストロズ)に次ぐ現時点でのチーム最年長が特守、いや“背中”でチームをけん引する姿勢を見せたかったのだろう。

 ただ、そんな男気ある行動も「ゆとり世代」が集まる今の代表選手には「刺激」にならないのか。この日、内川の特守の最中、菊池(広島)ら一部選手を除き、大半の選手はグラウンドに顔を出さなかった。そればかりか、一部選手はロッカー裏で談笑。先輩が奮闘する姿を見ていなかった。

「内川のチームに対する心意気はいいのですが、それを若手が見なければどうしようもない。内川にイチローのようなカリスマ性がない、と言えばそれまでですが、それにしてもこのチームの行く末を予感させた光景ですよね」とは某チーム関係者。

 内川は前回大会で走塁ミスを犯し、チームの決勝進出を逃したという悔しさがあるだけでなく、「もう一度世界一に」という強い憧れを誰よりも抱いている。

「やっぱり(大会が)終わった時に悔いがないようにしたい。あとは、2009年に(日本代表が)世界一になった時に日本中の方があれだけ喜んでくれたりとか、野球に対して盛り上がりも見せてくれたので。あの景色というのは野球をやってる者として、あれほど素晴らしいものはない。もう一度、ああいう空気の中で野球がしたいので」(内川)

 ただでさえ、キャプテンがいないチームで一体感が生まれづらい中でのこの異様な光景。この調子では「09年の世界一チーム」に近づくにはまだまだ時間がかかりそうか。